拍手小説


▼ ペダル拍手(東堂さん)

 きらきらと目がちかちかする。アイドルそのものの格好の尽八は、

「すごい…アイドルみたい…!」
「ジャニーさんも吃驚のな! ワハハハハ!」

 なんかもうすごくアイドルだった。

「こんなにアイドルの服が似合う男子高校生がこの世にいるだろうか、いや、いない! まあオレはただの男子高校生ではなく山神だから王子さながらの白ジャケットが似合うのも当然の理だがな!」
「うんうん、ほんとに似合うよ。すごくかっこいい」
「ワハハハハ!」

 鼻をものすごい勢いで高くしながら嬉しそうに笑う。微笑ましく見守りながらブロマイドに視線を移す。綺麗にウインクが決まっている瞬間だった。

「尽八ってウインク上手だよねえ。練習したの?」
「いや、最初から普通にできたな。ほら」

 ばちん、とウインクされる。わー、かっこいい…! ウインクされて嬉しくてへへへと頬を緩めた。

「すごいなあ、尽八は。なんでもできるなあ」
「天才だからな! だが、何事もやってみないとできるものもできない。お前もやってみろ」
「え」
「ほら、こうやって」
「え、ええっと…」
「両目瞑ってるな! こうだこう、片目を…」
「ん、んんん…」

 かくしてこうして特訓した結果。

「…! い、今できた、んじゃ…!?」

 きちんとウインクできて、ぱあっと自然と笑顔になる。やったあ! と喜ぶ私とは対照的に、尽八は何故か固まっている。硬直している。時間が止まっているみたいに。

「お、おーい」

 ひらひらと目の前で手を振ると、はっと我に返ったみたいだった。

「急にどうしたの? たちくら、わ!」
「もう一回」
「へ」
「もう一回、やってほしい。録画するから」

 真剣な顔でスマホを強く握りしめている尽八に、体温が急上昇する。

「え、と、とる、の?」
「当たり前だ。記録に残さねばならん。すっげー可愛かった」
「そ、そんな馬鹿な…」
「馬鹿じゃない! さあ、もう一回!」
「え、ちょ、そ、それは…」
「なんでだ! 何が嫌なんだ!」
「恥ずかしいからだよぉぉ…」




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