ディア・マイ・ヒーロー


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「総合優勝は千葉県総北高校―――!!」

ワァァァと歓声が沸きががる。全員の視線が、総北に向けられていた。私もパチパチと拍手をする。

あれから。鳴子くんは金城さんと供に、表彰台に上った。車から降りたあと、鳴子くんは言った。

『楠木さーん!ちょっとだけ待っててなー!!』

ぶんぶんと大きく手を左右に振りながら、大きな声で言う鳴子くん。いちいち大声を出すので、いちいち注目されている。つられて私まで注目されるのでたまったもじゃない。うるさいと口パクで返した。

表彰されている鳴子くんを、少し離れたところから見つめる。誇らしげな表情。花束を両手で大事層抱え込んでいる小野田くんの肩に腕を回している。本当に仲良しだなあ。…今泉くんとの犬猿っぷりと真逆だな…。

ぱち、と眼が合った。恥ずかしくて、ふいっと目を逸らす。

すると、

「楠木さぁーーーん!!」

マイクを通して、私の名前がさけばれた。

…え。

いつのまにか、鳴子くんが司会者の人からマイクを奪っていた。

「ワイ、めーっちゃ、めーっちゃ楠木さんのこと、好きです!!ぜーったい幸せにするから、世界で一番幸せにするから、」

すうっと息を吸い込んで、ものすごく、大きな声で叫んだ。

「付き合ってくださーーい!!」

ぽっかーーーーん、と静寂が訪れた。その、三秒後、どっと会場が沸いた。

「やるじゃねーか赤頭〜!!」

「ヒューッ!」

「へっへっへ、おおきに〜」

照れ臭そうに、鼻の下をかいている鳴子くんを、総北メンバーはこの馬鹿という白い目を向けていたり、頭を抱えていたり、真っ赤な顔ではわわ〜とあたふたしていたり。

私は、というと。

派手なことが、目立つことが、私は、だいっきらいなのに…。

恥ずかしすぎて、視線を足元に向ける。

視線が私に注がれる。ばっと顔を上げると、きらきらした目で私を見つめている鳴子くんがいた。

つりあげた目で鳴子くんを睨みつけ、大声で怒鳴った。

「鳴子くんの、バカ!!!!」




このあとめちゃくちゃ鳴子くんに、怒った。



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