ズサッという重いものが地面が擦れる音がした。辺りは先程までの賑わいが消え、しんとしてしまう。人々の視線はたった一か所、静寂を生んだ原因を見詰めたまま固まっていた。その表情は驚愕と戸惑いが入り混じり、視線は何事かと問うている。
騒ぎの中心であるその人はそんな周囲の視線など意に介さず、冷然とした面持ちでその場に佇んでいた。
「一体、何のつもりでしょうか…」
問い質す口調は穏やかなき聞こえるが、視線は冷え切っていて完全に少女が沸点に達していることを物語っている。そんな軽蔑を含めた視線は地面に転がっている対象に向けられていた。
「酷いなぁ。でもそんなところも素敵だね」
彼女の声に軽い笑い声が返って来た。地面に転がり冷たい視線を向けられたのに意にも介していないそれは伏せていた顔を上げる。そしてつっと立ち上がると男は地面に伏せた時についた土埃を払う仕種をした。
「折角新調したっていうのにもう汚れちゃった」
わざとらしくひらひらとコートの裾をはためかせる男に、彼女は片眉を器用に上げると口元に小さな笑みを浮かべる。
「あら…それはごめんなさい。でもそんな風にしてしまった人間には愛想が尽きてしまったでしょうからどうぞクリーニングをしに帰って下さいな?」
嘲笑と皮肉を込めた言葉は気遣う言葉など薄皮一枚で中身は毒だけが込められていた。聞いた者ならばすぐに分かる嫌悪の言葉。蚊帳の外である周囲の人間ですら聞いただけで何人か数歩後ず去った。だが男は「いいねいいね」とにやにや笑うだけで向けられる感情など何処吹く風だ。
「清々しいほどの言葉だねー。でもこれも愛しい君に与えられたものだと思えばこれほど嬉しいものはないよ」
気狂いだ。いやいっそ変種である。周囲の人間は皆そう思った。ここまで邪険に扱われても怒りではなく笑顔を浮かべるなど普通は出来ない。気味が悪いことすら通り越していっそ尊敬の域に達するほどの変人ぶりは、対峙している彼女を挑発するには十分過ぎるものだった。
「遠回しに言ってもダメなんですねならば言わせて頂きますけど…あなた頭が可笑しいですよ。今すぐに脳外科に行くか精神科で一生かけて治療することを選んだほうがいいと思います」
「そうか。これが噂のツンドラ、もしくはツンデレという奴だね。これまでの女性たちと違った意味ですごく刺激的だよ。やっぱり欲しいなぁ君」
ぐいっと顔を近づける男に彼女は眉を顰めると殊更強い視線で相手を睨みつける。
「…っ気狂いか!」
「何とでも。ぼくは正直なことしか言わない」
嫌そうに顔を歪める彼女を至近距離で見詰めてにんまりと笑うと、男はするりと彼女の柔らかな髪を梳いた。ミルクティー色の髪がさらさらと音を立てて彼女の手ではない指の隙間から落ちていく。
「さぁ…どうしようか?ぼくは君が欲しいし、君から離れる気はない」
「だけど私は嫌い」
「あっははは。困ったね?」
全く困った表情をしていない男はにっこりと笑った。胡散臭い笑顔は何か確証があるかのようだ。
「何が困ったね、よ。困って何かいない癖に」
「心外だって。困っているのは本当だよ?何しろ君が受けてくれないとぼくは君に付きまとうしかないんだから」
それは暗に了承しなければするまで付き纏うと脅しているようなものだった。
伏せられた意味を正確に理解した彼女は一層表情を歪めると唇を噛み締める。
「…歪んでるわ」
「失礼だね。アプローチが遠回しなだけだって。ぼくは何事にも慎重にかかるんだ」
肩をすくめて「何しろとっても臆病だからね」と微笑む男に己の不利を悟った彼女は悔し紛れに嘲笑を浮かべた。
「最っ悪な気分よ!」
「それはそれは、可哀想に?」
それを聞いた男はにんまりと満足そうに微笑んだ。

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▼男の性格:ストーカー気質。好きなものは死んでも手放さない。好きなものに嫌われていいからずっと傍にいたい。心も欲しいけど貰えないなら死んでも傍にい る。好きな相手の嫌そうな顔が一番好きなんだって。泣き顔より泣く寸前の顔が好きなんだと。サディスティックじゃないよと本人は否定してるよ。

▼一応男はポケモンの擬人化で彼女のストーカー。
彼 女好き過ぎて全国何処に居てもついてくる。移動しなきゃいけないから飛行タイプだね確実に。大穴狙ってドラゴンタイプでどうよ。ドラゴンって今まで正義の 味方イメージあったしぶっ壊す目的でやっちまうか。よしならコイツはカイリューか。いやサザンドラ辺りでどうよ?いいね。じゃあサザンドラで!みたいな感じで書いてた。

書いてたんだけどドラゴン要素何処。あれ可笑しいな。




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