「たな、ばた?」
「そうです」


虚無界から暇潰しにやってきた姉のなまえ。
何して遊ぼうか、と問われた時には若干の眩暈を覚えたが、ふと数日後に控えた祭の事を思い出した。
ものは使いようである。


「この日本では七月七日を七夕と呼び、短冊なる紙に願い事を書いて笹の葉に吊るすと願いが叶う、とされているのですよ」
「や、それは知ってるけど…だから何なの?」
「我が学園でも毎年、このロマン溢るる文化に触れるため七夕祭を開催しているんです」


パチンと指を鳴らすとなまえの前に写真が現れる。
一番目立つ位置に目立つ格好でメフィストが写っていたため、何を伝えたいのか判らなかった。
が、よくよく見るとメフィストの影に笹が写り込んでいる。
恐らく七夕祭とやらの写真なんだろう。


「毎年私が笹を準備していたんですが…ここ最近忙しくてまだ調達できていないんですよ」
「ああ、笹を調達してこいって事? オッケー私も祭事は好きだから協力するよ」
「…姉上、それって体よく追い払われ「良かったなあアマイモン!大好きな姉上と二人きりでお出掛けだぞ☆」わーい!」


"大好き"と"二人きり"を強調すれば簡単に言葉を飲み込むアマイモン。
所詮は悪魔、自分が可愛いようだ。


「それじゃあ早速、」


なまえは物質界に来た時同様、刀を抜くと正面に陣を描く。
締めにバッサリと陣を袈裟懸けに斬り裂くと、そこの景色はパックリと裂け、笹が鬱蒼と生い茂る林が顔を覗かせている。


「(鍵要らずとは…相変わらず便利な能力ですねぇ)」
「姉上のそれ、舞ってるみたいでキレーです」
「あらホント?ありがとー☆ ほら行こ!」
「はい!」


誉められ上機嫌に手を差し出せば、当然と言わんばかりにその手を取る。
その一連の動作にメフィストは一瞬眉根を寄せたが、既に背を向けた二人は気付かなかった。
裂けた空間へ足を踏み込む手前でなまえが振り返った時にはいつもの胡散臭い笑顔。


「二人共お気をつけて☆ くれぐれも――…」
「ありがとねメフィスト、追い返されたらどうしようかと思ってたの。
メフィストのために、お姉ちゃん頑張るからね!」


それは裏なんて無い愉しげな笑顔で、


「っ、期待、してますよ」
「ほいほーい」
「………(じと)」


意気揚々と歩き出すなまえと、意味ありげな目で己を見るアマイモンを見送り、溜め息を吐く。




「…やれやれ、やはりあの人は厄介だ」


もう既に閉ざされた其処を見つめ呟く。
その顔は困った様な、照れた様なもので。


「………あ、人前で力使うなと言いそびれましたね」


ー ー ー ー ー ー
平常心ではいられない何か。

0705
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