メフィスト=フェレス:
正十字学園理事長、祓魔塾塾長、正十字騎士團名誉騎士。
肩書きのみを見るとさも人間のようだがサタンの息子、つまり悪魔である。
笑顔が常ではあるがどうも何を考えているのか解らない胡散臭いもので、実際彼が成そうとしている事は不明。


アマイモン:
サタンの息子であり地の力を統べる悪魔の王。
メフィストの弟で、何かと彼の目論見に加担してはその有り余る力を発揮している。
兄とは異なり無表情が常でありこれまた何を考えているか不明。


そんな彼等に共通する事が一つ。
ただ一人、頭の上がらない人物がいる事。





「………暇だなぁ」


くぁ、と開けた口からは鋭い牙。
髪を掻き上げた際に覗く耳はぴんと尖り。
ゆらゆらと空気を弄ぶように揺れるのは黒く長い尻尾。


「あの子も物質界に行っちゃったし…久々に刀研ぎがてら行こうかしら」


そう呟き腰に携えた鞘から黒く鈍い光を放つ、日本刀によく似たそれを抜き掲げる。
宙を滑らせれば軌道に沿って青い光が浮かび上がり陣を成した。



*  *  *



「はーーくしゃいっ」
「わっ汚いですね、向こう向いて下さいよ兄上」
「ちゃんとハンカチで押さえただろう」


ず、と鼻をすすりながら弟であるアマイモンを睨みつける。


「風邪か…?一瞬悪寒がしたぞ」
「風邪?物質界に長くいるせいで体まで人間染みてきたんですか?」


お菓子を貪る手は止めずに兄であるメフィストを見やり、首を傾ける。


「やだ風邪ってしんどいんでしょ?間違っても私達に移さないでよー」
「そうですよ、兄上一人で苦しんで下さいね」
「私の心配は無しですか」


「「「……………」」」


「姉上!?」
「っ何故貴女が此処に!?」
「アマイモーン!久し振りっ貴方まで物質界に行っちゃうから寂しかったわよう!」
「ぼぐも゙でずー」


ぎゅうっとアマイモンの頭を抱え込み撫で回していると、メフィストによって引き剥がされる。
当人達は不服気だが知った事ではない。


「質問に答えて下さい」
「メフィストそれは物質界に来た理由?理事長室に来た理由?」
「それもですが結界はどうしたのです!」


学園内はメフィストによって結界が張り巡らされており、アマイモンですら許可無しに侵入は許されない。


「相変わらず野暮ねぇ、来た方法なんていいじゃないの…貴方より長生きしてる分、知識も経験も豊富なのよ」
「理由になってません、警備上確認しておきた……はぁもういいです、他言はしないで下さいよ」
「あら、ちょっと会わない間に聞き分け良くなったじゃない」
「此処は私より聞き分けの悪い輩ばかりでしてね」
「譲歩を覚えたと?偉い偉い!郷に入っては郷に従えってね」
「っ頭を撫でないで貰えますか、」
「ふふ、ぎゅうしなかっただけ譲歩したと思って頂戴な」
「あっズルいです兄上!姉上ボクも!」
「よぉーしよし、お前は相変わらず可愛いなぁ」
「姉上も変わらずお元気そうで安心しました」


わやくちゃわやくちゃ、
片や大人しく撫でられ、片や逃げようとするも何時の間にか尻尾を掴まれ身悶えしている。
もし今この場に他者が入り込んだなら、その光景の意味が判らず開けた扉を堅く閉じただろう。


「ッあぁもう姉上!結局此処に来た理由は何なのです!?」
「…父様の命令で」
「なっ」


なまえの父様、つまり自分達の父。サタン。
今まで自ら使いを出すような真似はしかなったのに、ここにきて唯一逆らい難い存在である姉を送り込んできたという事は。
メフィストの額から嫌な汗が滲み出る。


「ウッソー☆ 刀の手入れがてら遊びに来たの、ちゃんと父様に許可は取ったわよ?ビックリした?」
「はぁ!?」
「兄上、顔が酷いですよ」


気を張り巡らせて答えを待っていたため、まさかの答えに一瞬理解が追いつかなくなる。
お陰で嫌な汗も引っ込んだようだ。


「ほんっとうに嘘なんですね!?」
「ははは何、そんなにビビったの?嘘だって!本当に暇だったから遊びに来たのよ」
「……………はぁぁぁ…貴女が来て数分、一気に老けた気がします…」
「悪かったってば、まぁそれはさておき」
「「?」」


「何して遊ぼうか!」





それは夏の夕立のように突然やってきた。


ー ー ー ー ー ー ー
姉上登場。

0705
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -