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濡れた指先(甘凌)

世界で一番憎い男を愛してしまった。甘寧が逃げなかったとしても、今の俺なら止めを刺せないだろう。愛、だ、なんて安っぽい感情で父への恨みを果たせなくなりそうだなんて、俺はどれだけ親不孝者なのだろうか。無意識瞳からはボロボロと涙が零れて止まらなかった。「凌統?」「ばっ、なんでアンタがここにいるんだっての!」遠征だかなんだか知らないが、目の前で甘寧がこっちを見ていた。恥ずかしい、止めてくれ、声をかけないでくれ。復讐よりも、甘ったるいものに逃げ出した俺を見ないでくれ。目線を合わせていられなくなって、顔を逸らしてから、涙が残る頬を適当に指で拭う。「いま、アンタの顔なんか見たくないんだけど」「へぇ、そうかい」彼は去るどころか、こちらに近付いて来た。「男なんだし、んな泣くんじゃねぇよ。女々しいぜ」呆れた様な表情をしたまま甘寧は、俺の頬を指で拭って、彼は涙のついた指を美味しそうにぺろりと一舐めした。


甘凌への3つの恋のお題:愛してるって、言って。/濡れた指先/今ここで抱きしめたい http://shindanmaker.com/125562

2012/07/11
msu
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