Box

*伏左

現パロ










 世間様ではやれ休日だ黄金週間だと、騒がれているのに乗じるように得た久し振りの連休。溜まっていた家事やらも全て終わったので、たまには一人ふらつくのも良いだろうとマンションを出て階段を降りはじめた迄はよかった。なにも問題はなかったのである、後ろから肩を叩かれるまでは。
 ひゃ、と柄でもない声をあげてから(いきなり肩を叩かれるなんて予想外なのである)振り返れば、伏犠さんがにんまりと満足げな笑みを浮かべていた。
「丁度よい所で逢えるものじゃのう」
「別にあんたに逢うつもりで、外出したんじゃないんですけどね」
 伏犠さん。自称・仙人、その実態は職業不明で神出鬼没な男は俺の肩に腕を回して一緒に階段を降りようとする。なんの悪い冗談だろうか、ガタイの良い男二人が肩を組んで歩く図など悪夢に程近い。
「そんな、冷たい事を言われると傷つくのじゃが…………まぁ、これも何かの縁ということで共に出掛けぬか」
「阿呆な事を言う前に肩に腕を回すの、やめちゃあくれませんか」
「つまり背中に腕を回すのをやめたら、儂の外出に付き添ってくれるんじゃな?」
 左近はツンデレじゃのう! とけらけら笑ってから、肩を解放してくれた。たまには言う事を聞いてくれるらしい。(酒瓶片手に部屋に乗り込まれた時とは大違いだ)
「そうと決まれば、善は急げじゃなとりあえず儂の車に乗ってくれるかの?」
 は あ ?
 一言も一緒に外出したいと言った覚えがないのに、今度腕をひっつかまれて車を指さされた。某有名な黒塗りの車。なんの仕事をしているのかわからない理由の一つである。
「だから一緒に出掛けません、って!」
「さっきおぬし、嫌がらなかってはないか。それは肯定と同じじゃ!」
 嫌がるならお姫様で車まで連れてやってもいいのじゃよ? と勝ち誇った笑みを浮かべられた。
 数メートルとはいえガタイのよいおっさんにお姫様抱っこされるのと、大人しく伏犠さんに付いていくの。考える必要もない位簡単に結論が出る。「俺は一円も払いませんからね、」と釘を刺して彼の車まで向かってやる事にした。もう伏犠さんと外出しないという選択肢はないのである、もし選んだ所で俺の後ろからべったり付いて来るのは確実だろうから。
「元々、今日は驕ってやるつもりだったから、さして問題ではないのう」
「へ?」
 冗談のつもりでいったのに、あっさり認められると反応に困るものである。
「だって、今日は左近の誕生日じゃろう? 今日位は儂持ちでいい思いをさせてやらんと」
「あぁ……誕生日、なんでしたっけ」
「なんじゃ、反応が薄いのう」
「小さい子じゃあるまし、そんな事忘れちまいますよ」
 というか俺が今日誕生日だって、伏犠さんに話していましたっけ? と首を傾げれば、儂は仙人だからなんでも知っているんじゃ。と誇らしげに胸を張られた。

2011/05/05
msu
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