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*学パロ義トリオ+左近

左近→保健室のカウンセラー
三成→生徒会長
幸村→生徒会員
兼続→生徒会員+放送部員










「邪魔をする」
 やる事も無く数日前の新聞を読みながら時間を潰していた所、ドアががらりと開いて弁当を持った連中が我が物顔でソファを占拠しやがった。気が強く妥協する事が大嫌いな三成さん、放送部部長という肩書きを乱用して放送で意見を流す兼続、二人の間にたって穏便に物事を進めようとする幸村。この学校を牛耳る生徒会の面々である。
 カウンセリング室というのは、心に傷を持った少年少女が俺に悩みをぶちまける場所の筈なのに、生徒会が昼食を食べたり放課後に会議するのに使うものだから本来の姿が失われつつある。まぁ、俺としてはどちらでもいいのだが、心荒んだ生徒には誠に申し訳ない限りである。
 だってカウンセリングを受けるために俺でなく、保健室に乗り込んだ日など一貫の終わりなのだ。あの教師に物事を相談すれば、十中八九で「寝て忘れなよ」と切り返されるに決まっている。
「いい加減、俺に仕事をさせてくださいよ」
「? 貴様はちゃんと仕事をしているではないか」
 保険医の方が職務怠慢をしている、と三成さんは納得がいかないようにぼやきながら、箸を弁当に突き刺していた。彼の義母が作ったのだろう、栄養のバランスがきっちりとれそうな色鮮やかな弁当をしている。
「生徒への義を示すため、ここで会議をしているのだから問題ない」
 愛、と大きく卵で文字が書かれたご飯を器用に食べている。愛って、なんだ愛って。上の段のおかずはイカばかりであるし、彼なりのユーモラスだとでも言うのか。
「……兼続殿? その、イカばかりって…」
「これは、あの山犬が作ってくれたのだ。これも私の心が通じたというもの!」
 嬉しそうに言いながら箸を進める彼に、何を言っても無駄と悟ったらしい幸村は、ビニール袋から菓子パンを取り出してもしゃもしゃと食べ始めていた。大きなメロンパンと銘打っているようにとても大きく、女性だと食べきれない人がいるらしいが、食べ盛りの彼には関係ないようである。一口は小さいのに、凄いスピードで量が減っていく。
「……くのいちが作ってくれるのではないのか?」
「体育の後、お腹が空いて食べてしまいました」
 これは購買のです、と言いつつ食べきったメロンパンの袋を綺麗に畳んで、今度はジャムパンを取り出し始めた。くのいちさんの事だから大量のお弁当を作ったのだろうに、まだ足りないとは高校生の胃袋は想像出来ない位に大きいのかも知れない。
「お三方とも、まぁ…弁当を作って貰えて羨ましい限りですよ」
「左近の弁当も、毎回豪勢で美味そうではないか」
 俺の弁当から唐揚げを攫った三成さんは、美味しそうにもぐもぐ食べていた。自分の弁当にも入っているだろうに、どうして俺のタンパク源をくすねていくのだろうか。
「……まぁ、夕飯用に買った総菜のあまりもんなんですけどね」
「手作りでない弁当など不義であるぞ!」
「総菜ばかりでは身体に悪いですよ、左近殿」
 政宗さんの作った『嫌がらせ弁当』を美味しく食べてしまう兼続さんは兎も角、純真な目をした幸村に言われてしまうと、返答に困ってしまう。
「…朝早いのは苦手でねぇ、起きられたら作りますよ」
 きっと無理ですけど、と付け足すのが気が引けて、残ったおかずの消費に精を出す。美味しくはあるけど、総菜特有の味の濃さで舌が馬鹿になってしまいそうだ。別に料理が下手な訳ではない、寧ろ好きな方である。けれど、自分の為だけに作るのは寂しくては、やる気が湧かないのだ。と考えながら、食べきったお弁当箱を小さく畳んで、風呂敷にくるんでいれば、三成さんがこちらをじぃ、と見てきている。
「左近、その弁当箱を俺に貸せ」
「別にいいですけど、どうするんですか?」
「おねね様に左近の分も作って貰う」
 四人分も作っているのだし、きっとおねね様なら作ってくれる。と、三成さんはテーブルから俺の弁当箱を取り上げてしまった。
「いいですよ、俺の分まで作って貰っちゃあ迷惑です」
「きっとおねね様なら、総菜を食べている方が嫌がるだろう」
「これこそ義だな!」
 兼続さんもよくわからない相槌を入れてくるものだから、余計に取り返せなくなってしまった。幸村も口には出さないけれど三成さんの意見に参戦のようで、止めに入ってくれなかった。
「……仕方ないですねぇ。明日はよろしく、とお伝えください」
 申し訳ない気持ちもありながら、久し振りに美味しいご飯にありつける、と内心嬉しくもあった。

2012/01/22
msu
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