*鈴の音が聞こえない、(甘凌)
凌統5SPシナリオ後
『甘寧が死んだ。』
その事だけで俺の頭は一杯になっていた。
父の敵で、下ってすぐに俺と同じ位まで引き上げられ、軍議の時にはて足を机に乗せて聞く気がまるでない素振りをする。戦でひたすら刃を交わし、いつ死ぬかわからない状態に高揚感を示す、俺とは正反対過ぎて受け入れそうにもない男であった。つまりは視界に入るだけで不愉快に思わせてくれる人物だった筈だ。戦の途中に手違えで殺したように繕おうとした事もあったし、宴の時に剣舞を披露しながらついでに殺そうともした。しかし、助けて貰ったあの日からは少しは見る目が変わってきた。
冷静になって考えてみたら、戦場で敵を殺すのは当たり前なのである。それも気付かずに、癇癪を起こしていた俺は如何に子供っぽかったのだろうか。今考えても、もう遅いのだけど。
だって彼は逝ってしまったのだ。
死体は重たくて持ち帰ってこれなかったようで、手には入った形見らしい形見は腰に付けていた鈴だけであった。
「なんで俺に渡したんだっての」
呉の軍師、陸遜によって鈴は俺の手にやってきた。どうして俺に託したのかまるでわからない。けれど捨てる訳にもいかず、木の枝に引っ掛けて酒を煽っている最中である。
風に揺られて鈴は愛らしい音をたてる。これが数日前まで、上半身裸の刺青だらけの男に付いていたなど笑えない冗談である。あぁ付いていてくれた方が良かったのに、やっと仲違いを解消したというのに。
「俺がもう少し意固地じゃなければ、少しは良かったのかねぇ…」
考えるのも馬鹿馬鹿しくなって空になった器と、枝に引っ掛けていた鈴を外して部屋に帰る事にした。
×××
数日後の戦で、奇妙な事が発生した。先日死んだ甘寧殿が付けていた鈴の音が、聞こえるというのだ。音が聞こえた後の戦場には、打撲傷が激しい死体が山積みになっていた。
しかし、甘寧殿の武器は鋭利な刃物の筈、打撲痕が残る訳がないのである。不思議に思いながら死体を眺めていたら、朱然殿が報告をしてきた。
腰に鈴を付けた凌統殿が泣きながら敵を倒していた、と。
5SP凌統伝その後。ヤンデりんとん。
2012/01/20
msu