Box

まっくらやみ。(ハザ→ジン→ラグ)

 黒い雨が降っている。べっとりと張り付くようなそれは、指で払っても服から落ちてはくれなかった。次第にそれは段々と強く降り始めて僕の視界さえも犯しはじめた。僕より数歩先、赤いコートを羽織り、昔はお揃いの黄金色だったのに、いつのにやら雪のようになってしまった白い髪。黒い中で映える筈のそれすらも視界から消えてしまった。前も横も上も下もなにもかもわからない、暗闇。その途端、僕は始めて自分が一人だと知った。ずっと兄さんを追いかけていたけれど、彼は一度も振り返っちゃくれなかったのだ。
「寂しいよ。寂しいよ、兄さん。どうして兄さんは僕をおいて行くの?」
 叫んだって兄さんに聞こえる気なんてしなかったけど、ただただ喚いた。涙がぼろぼろと零れる。けれど、次第に喉から自分のモノとは思えない笑い声が零れてきた。
「あははは、あはははは!」「どうせ兄さんは僕なんてどうでもいいんだ!ひどいなぁ、兄さんは。こんなにも僕は兄さんを×したいのに」
 なにもない世界に自分の声だけが響く。兄さんが見えなくなった今、僕はなにをしたらいいかきらなくなってしまった。ふ、と力が抜けた途端、膝が折れてしまい、地面へ座り込む。立ち上がろうとしても、脚に力が入らない。なんて無様な姿なのだろうか。これが英雄と言われた男の末路なのか。兄に依存する事でしか僕は生きる意味がなかった、とまざまざと見せられてしまったのだから。
「別にいいじゃないですか」
 誰も居なかった後ろから声がする。振り返れば僕の髪と同じ色をした瞳がにやにやと笑っていた。
「次は私の為に生きてくださいよ」
 伸ばされた白くて長い手にすがるように捕まれば、
「いい子ですねェ」
 と蛇のように狡猾な笑みを浮かべた男に、頭を優しく撫でられた。


ラグナに手が届かないジンとジンを通してハクメンを見ているハザマ。習作

2012/01/20
BB
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