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*年越覇淮

2013正月
現パロ










 ぼーん、ぼーん、と外から鐘の音が聞こえる。こたつに足を突っ込み、ずるずると蕎麦を食べながら、紅白に続いて始まる除夜の鐘の実況番組を見る。この番組を見る度に、年が変わるのかとしみじみと思うのであった。全国津々浦々の神社を背景に、色とりどりの服に身を包んだ若い男女がテレビに映る。小さい神社とかだと自分で鐘をつかせて貰えるらしいが、こういう神社はどうなのだろうか。私がもっと若い頃にその事を知っていたら一度位は大晦日に神社へ足を向けたかもしれないが、この年になってしまっては誰かの付き合いとか、なにかしら理由をつけないと行く事はないだろう。
「あけましておめでとうございます」
 アナウンサーが画面越しお辞儀をしてくる。あぁ、年が越えてしまった。二〇一三年巳年。今年はどんな年になるのだろうかと、年を越えても尚続く特番をなんとなく見ながら炬燵の上に無造作に積んでおいた蜜柑に手を伸ばして剥き始める。
 大きな白い筋をとってから一房、一房食べていると、いきなりテーブルに置いてある携帯のバイブレータが小さく鳴った。年を越えてすぐは電波規制とかなんだとかで、あまりメールが届かないと聞いた事があったが、最近は解消をしたようである。未だに慣れないスマートフォンを弄りながらかかってきた電話をとる。
「どうかしましたか、夏侯覇殿」
『なぁなぁ、郭淮。今家にいるか?』
「はい、家でゆっくりテレビを見ておりますが……」
『ちょうどよかった、郭淮の部屋の前にいるから早く開けてくれよ』
 扉を叩く音がする。インターホンがついているのに、なんで扉を叩くのだろうか彼は。ご近所に迷惑をかける前に出なくては、と急いでチェーンを外してドアをあけてやる。
 こちらがいきなり扉を開けたから、彼は思い切り頭をぶつけたようで、手で額を擦りながらも、にへらと笑ってみせる。高校生がこんな時間に出歩くなんて駄目ですよ、と忠告をする前に、彼は勝手知ったる我が家と言わんばかりにずかずかと部屋に入ってきて、私のコートを物色しはじめた。
「こんな遅くにどうしたんですか、夏侯覇殿」
「今、神社に行くと鐘をつかせて貰える、って父さんから聞いたから……なぁ、今から神社に行こうぜ?」
「はぁ……だから、私のコート漁っているという事ですか」
「早く行こうぜ!」
「テレビと炬燵を消すので、少し待っていてください」
 彼に背を向けてリビングに戻ろうとした途端、背中に重さを感じる。ずっしり、した重量に加えて独特のあたたかさ。
「……なにしてるいるんですか、夏侯覇殿」
「だって、外が寒かったから、つい」
「早くどいてくださらないと、電源を消せないのですが」
 それもそうだな、とけらけら笑いながらも彼は暫く離してくれなかった。

2013/01/01
msu
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