首都・ダリルシェイドにて-----
「それでは、本日より其方には客員剣士の称号を与える。宜しく頼むぞ、ファーストネーム」
「有難う御座います。」
「民からの信頼も厚い……期待しておるぞ。」
「はい。ご期待に添えるよう、日々精進します」
うむ、と頷くのを確認すると、一歩下がって頭を下げ王座から離れた。
城外へ出ると、気持ちの良い風が通り抜けていく。
「……よし!」
夢に見ていた"客員剣士"。
とうとう、私はそれになったのだ。
もともと私は森に放り出された孤児だった。
親の顔は覚えていない。それくらいにひどく幼かった。
だからと言って、独りなのだという事実は理解できないわけではなかった。
モンスターもいる森の中、私は必死に人を探した。とにかく安心できる場所が欲しかった。
走り出してどれ程たったか、足の指がボロボロになった頃に山賊と出会った。
それと同時に私の瞳から涙が止まらなくなり、その時、全ての悲しみを流しきった気がする。
当然、山賊は戸惑った。戸惑いながらも、私の置かれた立場を理解し、少しばかりの食料と少しばかりの情報をくれた。同情からのものだ。
その山賊の助言のお陰で街に出れたのだが、それからは怒涛の日々だった。
ひたすら働き、働き、働いた。
生き急ぐように働いた。生きる為に働いたが、生きる目的が見出せなかった。
矛盾しているようだが本当にそうなのだから仕方がない。
そんなある日、耳にしたダリルシェイドという街の事。
王様のお城がある街。私に憧れを持たせるにはこれだけで十分だった。
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