朝を迎えて身支度を整え、貰ったプレゼントの事を思い出しいそいそと開封する。
お菓子だったり、花だったり、装飾品だったり。手紙が入っているものもあり、返事も書かなければと頭の隅に置いておく。とりあえずリオンにお礼をと思い、リオンがレシピ本でこっそりチェックしてたお菓子をこっそり私がメモしていたのでそれを作ろう。笑いを堪えながら急いで書いたので、字が汚いのが難点だが我慢。そんなに材料も必要無いお菓子なので簡単に作れそうだ。しかしこういうのに限ってコツだのなんだのが必要だったりするので油断は禁物。


「材料の準備良し!」


まずはボウルと鍋を用意して……


「うん、出来た!」


無事に完成し、ぷるぷるした姿に可愛らしさを感じる。色も悪くは無い。レシピ本の写真でしか見た事ないが、おそらく外見は大丈夫だろう。さて、問題の味だが……うん、美味しい!優しい味がふんわり口に広がってとても幸せな気分だ。よしよし、ではこれを早速。





「体は大丈夫なのか」

「うん、お陰様で。その事でお礼に来たんだけど……」

「感謝の言葉はもう聞き飽きたぞ」

「と思って、これを。」


リオンの前にプリンを差し出すと、目を見開く。相変わらず大きな瞳だ。予想通りの反応にふふっと笑うと、少し拗ねたように眉を寄せて額を小突かれた。


「あたっ」

「……いつ見た?」

「ふふ、内緒です。」

「からかわないでくれ。これはファーストネームが作ったのか?」


そうだよ、と返事をすると屋敷の中に入れてくれた。
初めて作ったため結構な量になってしまったので、いくつか取って後は冷蔵庫にしまってもらい居間で一緒に食べる事になった。マリアンが居ないのが残念ではあるがしょうがない、後でデザートにでも食べてもらおう。紅茶が入ると、リオンは何も言わずプリンを口に運んだ。


「……。」

「一応さっき味見はしたんだけど、どうかな」

「まぁまぁだな。」

「本当?良かったー」

『僕もファーストネームのプリンってやつ食べたいなー!どんな味がするんです?』


それからはシャルと三人でお菓子談義になって、日が暮れるまで長話をしていた。気付いた頃には夕食の匂いがたちこめてきていて、いけないいけないと椅子を引いた。


『ファーストネーム、もう帰っちゃうんですか?』

「もうって言っても結構長居しちゃったよ。プリンだけど、あまり日持ちしないと思うから皆で食べてね。」

「ああ。……」


手をじっと見てくるので何?と声を掛けると、消毒を忘れるなよ、とか剣の修行は止めておけ、と言われた。彼なりに心配してくれている事が嬉しくて笑顔で頷くと、またねと手を振り屋敷をあとにした。






『たまには夕食でも一緒にーとか誘ったらどうです?』

「何で僕がそんな事を……」

『一人の食事は寂しいでしょう。あ、そういえばファーストネーム、今日はいつもの黒ゴムでしたね』

「ああ。」

『もうアレは付けるな!ぐらい言いましょうよ』

「それこそ何で僕がそんな事を言わなくちゃいけないんだ。今日は少し騒がしいぞ、シャル」





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