専用抱き枕

疲れすぎると逆に眠れないと聞いたことはあった。
…まさか、自分がそうなるとは。
何度も何度もベッドの上で寝返りをするが、眠気というものは一切訪れない。
名前は俺の睡眠を邪魔してはいけない、とリビングのソファで眠ってしまっている。久々の泊まりで別々に寝るというのも何だか寂しい気もするが、名前なりの優しさだったんだろう。
でも、何かこう、抱き枕のようなものが欲しい。そう、抱き心地のいい温かい…抱き枕が……

「…それで私をわざわざベッドに運んできたのね」
「絶対こっちの方が眠れる」
「零がそれでいいならいいんだけど…狭くない?」
「狭くない。あったかい」

リビングで寝ている名前を持ってきてベッドに設置すれば完了。ぎゅうぎゅうと抱き締めてやれば「痛いよ」なんて笑ってくれる。なんて優しい抱き枕だ。

「……いい匂いがする…」
「零と同じシャンプーだけど…」
「…名前の、匂い……」
「え、そう言われるとちょっとやだ」

ふわりと香る名前の匂いにどうしようもなく安心している自分に笑いが込み上げてくる。
こんなに安心できる存在ができるなんて思ってもみなかった。どこを触ってもふわふわで…ふと、やってみたいことが浮かんで身体ごと下へ動かす。

「え、え?零?」
「……これは…」
「…こんなことするなんて、随分疲れてるんだね」

俺の目の前には名前の胸。女性特有のその柔らかさに顔中が包まれる。これはなんとも言えない幸福感。風見あたりがこの光景を目にしたら気絶してしまうんじゃないだろうか。

「あー……ねむれそう…」
「…おやすみ、零」

頭を抱えるように抱き締めてくれる名前に、柄にもなく女神のような奴だ、と思ったところで意識は途切れた。


翌朝、目が覚めて名前の胸に顔を埋めて眠った昨晩の自分の失態に頭を抱えたくなったのは言うまでもない。
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