小説 | ナノ


▼ 盗撮はいけません

私たち公安警察はテレビカメラや携帯カメラなど、顔が写ってしまうものを極端に避ける。
特に、黒の組織に潜入捜査中の私と零なんかはうっかり写って公安の者だとバレたりしたら命はない。
だから常に気を張ってはいるんだけど…だけど!!

「ねぇねぇ撮れた?」
「ばっちり!やばいかっこいい〜」

喫茶ポアロで休憩中、隣に座っている女子高生たちが何やら騒いでいる。最近だとアプリで無音カメラとか普通にあるらしい。なんて物騒な世の中だ。
ちら、とスマートフォンを覗き見ると、案の定爽やかスマイルの安室さんが写っていた。盗撮だな。

「これ拡散していいかなぁ、みんな欲しがってたもんね写真」
「いいじゃんあたしにも送って」
「それはダメでしょ!!!」

とんでもねぇ!とその場で叫んだ。プライバシー侵害というものをご存知なのだろうか、こいつら。SNSなんかに上げられたらどうなってしまうか。確実に殺されてしまう。女子高生たちと向き合い、ため息をつく。

「それ、立派な盗撮になるからね?」
「なっ…盗撮って、そんな大袈裟な」
「なにこのおばさん、感じ悪…」
「おばっ、」
「どうかしました?」

ぽん、と肩に手を置いてきた安室さん。…この余裕っぷり、絶対盗撮されてるの知ってたな。分かってて敢えて止めなかったのか、この男は。

「安室さん、このおばさんが…」
「おばさん?どこにいるんです?」
「この人です!私たちのスマートフォン覗いたりしてきて…」
「覗きですか、それはいけませんね」
「でしょ〜!」

勝ち誇ったように笑っている女子高生。むかつきはするが後は安室さんが自分で片をつけてくれるだろうと、珈琲に視線を戻す。「聞いてんの!?」とかヒステリックな声が聞こえるけど気にしない。

「ところで、これ何です?」
「あっ、それは…」
「…これ盗撮ですよ?こんなことするより…」

ゆっくりと女子高生に顔を近付けて囁く。

「直接、僕に会いに来てくれると嬉しいんだけどな…」

あ、さり気なく写真消してる。他にも盗撮がないかカメラロールチェックしてる。なんて恐ろしいやつ。
「ご、ごめんなさいぃ…」
「もうしません…」
「そうしてくれると助かります。あ、あと…」

ぐいっと突然腕を引っ張られ、必然的に安室さんの肩に頭を乗せる。さらに頭に手を置かれて数回撫でる仕草をすると、安室さんはにこやかに女子高生たちに言い放った。

「僕の大切な人、傷付けちゃダメですよ?」

素敵なウインクまでしちゃって。
さっきの幸せモードはどこへやら。砂と化した女子高生たちを尻目に珈琲を飲む。あーあ、冷めちゃってる。

「…知ってたでしょ、撮られてるの」
「さぁ?」
「どうせ私が注意してくれるかどうか見たかっただけでしょ」
「…嬉しかったですよ、ちゃんと僕のこと守ってくれて。ありがとうございます」

にっこり微笑む姿にきゅんとしたのは気のせいだと思い込み、すっかり冷めてしまった珈琲のおかわりを頼んだ。

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