▼ 浮気騒動
「安室さんが浮気!?」
「ちょ、声大きいって!それにまだ名前さんに確認したわけじゃ…」
「私に何を確認するって?」
…店内に入って早々、女子高生2人におばけでも見たような顔されたら流石に私だって傷付く。
園子ちゃんなんて涙目よ。
「名前さん…あの…」
「ん?なーに?」
蘭ちゃんたちの隣に座って今日は安室さんお休みか、なんて呑気に考えながら梓さんに珈琲を注文する。もう一度蘭ちゃんの方に顔を向けると、今度は園子ちゃんがぐい、と顔を近づけて来る。きゃ、ちゅーしちゃいそうなんて考えてたら隣に座ってたコナンくんにすごい目で見られた。ごめんなさい。
「あの!安室さんなんですけど!」
「うん?」
「名前さんの他に彼女いるんですか!?」
「ぶふっ!」
「ちょっと、園子!!」
つい吹き出してしまった珈琲は見事にテーブルを汚した。コナンくんごめん、そんな目で見ないで泣きそう。
「ど、どうしてまたそんなことを…?」
「…実は、昨日…」
昨日の夕方、学校から帰ってくる途中に路地裏から安室さんらしき人が女性の肩を抱いて出てきた。2人はそのまま車に乗り込んで行ってしまったそうだ。なるほど。なるほど…。
「なるほど…?」
「何か、心当たりとかあります…?」
「いや、全くない。浮気かな」
「えぇっ!?」
驚く蘭ちゃんもかわいい……おいコナンくんさり気なく麻酔銃打とうとしないで。
確かに昨日は安室さんには会っていないし、その女性は私ではない。
でも安室さん浮気するような人じゃないと思うんだけどなぁ。
「そんなに気になるなら僕に聞いてみたらいいんじゃないですか」
「それもそうだね。安室さん浮気したの……って、えぇ?何でここにいるの?」
「何でって、出勤したからですよ」
園子ちゃんと蘭ちゃんは驚きから縮こまってしまっている。かわいい今ならお持ち帰りできる…「名前姉ちゃん?」コナンくん麻酔銃打たないで!!!
「盛り上がっているところ申し訳ないですが、僕は浮気なんてしてませんよ。名前さん一筋ですから」
「きゃー聞いた!?名前さん一筋だって愛されてるぅ〜!!」
「園子ちゃん立ち直り早いな。安室さん、でも昨日女の人の肩抱いて車に乗り込んだらしいじゃないですか」
ふむ、と安室さんは何か考える素振りをして黙り込む。…やっぱり浮気か?
「安室さん?」
「あぁ、思い出しました。それ、依頼者ですよ。ストーカー被害に遭ってるって言うから一緒に行動してたんですが、ストーカーが現れるどころか恋人のふりしてくれって頼まれちゃって」
結局、ストーカー被害も僕に近付くための嘘でしたが、と私に珈琲のおかわりを入れながらぺらぺらと話してくれる。何だ浮気じゃないのか。
「…まさか僕のこと疑ってたんですか?名前さん」
「え?あの…えっと…」
「…お仕置きです」
ちゅ、とほっぺに柔らかい感触と女子高生の叫び声。いやああ安室さんんん!!なんて悲痛な声まで聞こえてくる。ごめんな、相手が私で。
「…ここですることないじゃないですか」
「おや、これで終わりだと思ってるんですか?」
「へ?」
「続きは家で…ね?」
綺麗にウインクを決めた安室さんは何事もなかったかのように注文を取りに行ってしまった。
「…名前さん、すごく愛されてますね」
「やばい家で何されるんだ取り調べか…?」