長編 | ナノ

5
着いたぞ、と肩を揺すられる。
ゆっくり目を開ければ見慣れた建物と、零のどアップ。めちゃくちゃ近い。

「あれ…私寝てた?」
「ぐっすりだった」
「あー…なんかすっきりした。送ってくれてありがとう、零。…あのさ、明日もポアロにいるの?」
「いや、明日からは少しこれについて動く」

零が取り出したのは、さっきベルモットから渡されたUSB。
零の膝にノートパソコンが置いてあるから、きっと私が寝ている間に内容を確認したんだろう。

「任務確認したの?」
「名前は今回待機だ」
「…え?だって、これベルモットが元々私に…」

零はバタン、と力強くノートパソコンを閉じた。

「ベルモットにも確認をとった。この任務は俺一人で遂行する」
「そんな、ちょっと待ってよ!」
「…明日からは公安の方を頼む。しばらくそっちには行けない」
「零ってば!!」

「…これは命令だ、コードネーム」

目付きが変わった零に、身体が動かなくなる。命令だなんて言うのは、上司と部下だということを分からせるためだ。
これには逆らうことなんてできない。

「…了解」

なにか考えがあって私を離したのだと、そう自分に思い込ませて車を降りた。

「…ずるいよなぁ、本当……」

肝心なところは教えてくれない。職業柄仕方の無いことだとは分かっていても、今はただただ胸が苦しかった。