長編 | ナノ

9
「終わったあ…」
「お疲れ様です」

最後の書類にサインしたところで風見さんがペットボトルのお茶を渡してくれる。なんて気が利く人だ。
ありがとうございます、と声を掛けてからお茶に口をつける。

「あの…」
「ん?何ですか?」
「…降谷さんから連絡ありましたか?」
「……来てませんけど。何か用事でも?」
「あ、いえ…」

少しむっとして答えると、風見さんは気まずいと感じたのかそっぽを向いて自分の席へと戻ってしまった。…大人げない態度だったか、と思い風見さんに謝ろうとしたがもう自分の仕事に取りかかっているみたいだからやめておいた。
とにかく、ここでの仕事は終わったし長居するわけにはいかない。いつ組織の奴らに見つかるか分からないし。すぐさま荷物をまとめて退庁しようと立ち上がった。

「お帰りですか」
「ええ。外での仕事が残ってるので。お先に失礼します」

風見さんは何か言いたげだったが、これ以上待っていても口を開きそうにないのでそのまま外へ出る。
…バーボンが任務をしているということは、今日はポアロにはいないだろう。
この間は珈琲を楽しむ時間もなかったから今度こそ、とポアロへと向かった。