アンがこの聖域に現れた翌日、アテナは聖域中にある伝達をした。


それは、異世界から来た彼女をアテナの友として、家族として聖域に迎え入れると言う事と、アンに手出しは無用であると言う事である。




アテナの勅命である以上、この聖域で生きている者は従わねばならん。
もしそれを破った者には相応の処罰が下される。
最初は戸惑う者も多かったのだが、何しろアテナと現教皇である愚兄と前教皇、そして黄金聖闘士全員と、アンが現れた当時コロッセオにいた訓練生や青銅聖闘士がアンが異世界人である事を認めているのだから、雑兵ら下の者はどうしようもない。
渋々でも納得はした様子だった………まぁ、用心するに越したことはないだろうが。


そんな俺の気も知らず、アンは昨日は現場にいなかった星矢や瞬、紫龍、氷河に囲まれて話をしていた。





「へぇ、アンさんは炎になれるんだね。」

「うん。生々しいけどね。」

「………た、確かに(汗)」

「でもさ、炎になれるなら野営の時に便利だよな!」

「簡単に火を起こせるし、肉の丸焼きだってお手のものだよー。火加減だってちゃんと調節出来るし!」


……なんだか論点が多少ずれていると思うのは俺だけだろうか。
だが、アンが言った『肉の丸焼き』に星矢が反応していた。



「なぁ、肉の丸焼きってさ、マンガに出てくるような感じなのか!?」

「うーん…、こんな感じ。」


アンは、しゃがみこむと足元の土に指で絵を描いたのだが、それは所謂『骨付き肉』と言うヤツで、星矢のテンションが無駄に上がっていた。
アンの世界には不思議な生物が多数存在し、人間の身長を優に超えるサイズの蠍やら蟹やらだったり、カンフーをするジュゴン(そのままの名前でクンフージュゴンと言うらしい)がいたりするようだ。
ちなみにそのクンフージュゴンとやらは、負けた者に弟子入りすると言う、何とも武闘派な生き物だと言うのだ。
全くもって、こちらの世界とはかけ離れている。





「それにしても、アンさんの恰好……。」

「ん?」

「あの、海賊の女性ってみんなそんな露出の高い服を?」

「やっぱ戦うからねぇ、動きやすい恰好になっちゃうんだよねぇ。
あ、ちなみに私の場合は双子の兄貴とほぼお揃いにしたからこれなんだけど。」

「へぇー、アンさんも双子なんだ!でも、お兄さんとお揃いだなんて、仲がいいんだね。」


瞬はにこやかにそう言ったのだが、気が気ではなかった。
もともと兄の存在を口にしたのはアンなのだが…。
しかし、俺の心配は杞憂だったらしく、アンは『私のたった一人の血を分けた兄弟だし、とにかく自慢の兄貴だよ』と誇らしげに笑って言ったのだ。
そんなアンの笑顔に視線を奪われたのだが、本来の目的を達するべく話題を変えることにした。





「………ところで星矢、紫龍、氷河。アイオリア達が稽古を付けると言っていたから早く行った方がいいぞ。」

「あっ、そうだ!アンさんまた話そうな!」

「オッケー、頑張ってな!」


走り去っていく星矢達にそう声を掛けると、彼らは振り返って手を振った。
残ったのは瞬とアンと俺だけだったが、瞬は瞬でアフロディーテから呼び出しがかかっているのだ。




「瞬、アフロディーテが探していたぞ。お前に紅茶を振る舞うと言っていたが。」

「あっ、そうだった。せっかくお茶菓子も持ってきたんだから行ってこないと!アンさんも一緒にどう?」

「うーん、実はこれからカノンにこの辺りを案内してもらうんだよね。だからまた今度ね?」

「そっかぁ、残念だなぁ。じゃあまた今度!」


手を振りながら去っていく瞬を見送ると、アンと共に十二宮の階段を下り始めた。
白羊宮に着くまでの間、主のいた宮は天秤宮と処女宮、巨蟹宮、金牛宮のみだったが、アンは4人にニコニコとしながら挨拶を交わし(シャカには『拝みたまえ』と言われて素直に拝んでいて、ヤツは満更でもなさそうな顔をしていた)十二宮を通り抜けた。









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