12月31日。
俺はルフィとクレアと3人で朝からみっちり修行をして、夕方になってから戻ってきた。
その後、クレアが作ってくれた大量のメシ(当然俺も手伝った)を、もの凄い勢いで平らげた。
それはきっと、他人が見れば戦場さながらの光景だろう……。
まぁ、そんな風に食うのは俺とルフィとジジィだけなんだが。
ついでに言うと、俺もクレアもジジィも、食べてる途中だろうが突然寝ると言う悪癖がある。
血が繋がってねぇのに不思議なもんだな。
そんなこんなで怒涛の夕食タイムが終わると、クレアはエプロンを外しながら、リビングで寛ぐルフィと俺に向き直った。
「じゃあ2人とも。私はマキノさんのとこにお手伝い行ってくるから。」
「こんな時間にか?俺もついてくぞ?」
「大丈夫だよー、私の実力は知ってるでしょ?」
クレアはルフィより強くて、俺とは互角と言っても過言ではない強さだ。
それにクレアは能力者だから、この界隈では俺とジジィ以外に勝てるヤツなんかいねぇんだ。
「まぁな…そりゃそうなんだが。」
「ね。んじゃ、ルフィの事頼むね?」
クレアはドアを開けながらウィンクをして出て行った。
不覚にもその表情にドキリとしてしまった俺は顔を少しだけ赤らめて、ルフィに聞こえないように『参った……』と呟いた。
それから数時間後。
クレアに頼まれた食事の後片付けも終わり(やったのは95%俺。ルフィはテーブル拭いたくらい)、雑誌を読んだりしながらクレアの帰りを待った。
が、時計が23時30分を廻っても帰ってこない。
ルフィはウトウトしながらも、何とか俺と一緒にクレアを待っている。
「おいルフィ、眠いんならちゃんと部屋で寝ろ。」
「んぅ……おれもクレア待つ……。」
目を擦りながら起き上がったルフィに軽くため息を吐くと、俺はキッチンに入っていった。
「ほれルフィ。」
コトリ、とルフィの前に置いたのは、ミルクがたっぷり入ったカフェオレ。
それに目を輝かせて飛びつくルフィを『可愛いヤツだなぁ』なんて思いながら、俺は自分の分のコーヒーを一口含んで再び壁に掛けられた時計に目を遣った。
「いくらなんでも遅いな。あと5分で日が変わっちまう……ルフィ、俺迎えに行ってくるから……」
「ただいまー!!間に合ったかなぁ!?」
「おかえりー!!クレア、遅いぞ!」
「ちゃんと間に合ったでしょーが。」
クレアの声がすると同時にルフィは文句を言いながら玄関に走っていった。
何事かと思いつつルフィの後に続くと、クレアが両手にいくつかの荷物を抱え、満面の笑顔でルフィの相手をしていた。
『おかえり』と声を掛けながらクレアが持っている荷物を受け取ると、クレアは『ありがと』と微笑みながら着ていたコートを脱いだ。
「おらルフィ、お前もクレアがいっぱい荷物持ってたんだから少しくらい持ってやれよ。」
「おぅ、そうだった。」
悪びれもせずルフィは『シシシッ!』と笑うと、俺が手に持っていたクレアの荷物を奪い取って一足先にリビングに戻っていった。
それを見送ってから、俺らは顔を見合わせて笑いあった。
「クレアーッ!エースーッ!!早く来い!!!!」
「あっ、そうだった。エース、早く!」
クレアは思い出したかのように声を上げると、俺の手を引っ張ってリビングに向かった。
リビングに戻ると、テーブルの上には、さっき俺が淹れたコーヒーの横に、かなり大きなホールケーキが鎮座していた。
そしてそのケーキの上にはチョコで出来たプレートが乗っかっていて、そこには俺の誕生日を祝うメッセージが書かれてたんだ。
「すっげー!!!これ、クレア1人で作ったのか!?」
「当然でしょ〜。愛するエースのためだもん。」
「シシシッ!なぁなぁ、俺の誕生日ん時もケーキ作ってくれ!!」
「もちろん!可愛い弟のために姉ちゃん特大のケーキ作っちゃる!」
呆気にとられている俺をよそに、ルフィとクレアが楽しそうに5ヵ月も先の話をしていた。
もしかして、クレアは俺が自分の誕生日を忘れているってのを良いことに、敢えて秘密にしてマキノのとこで作ってきてくれたんだろうか。
「エース。誕生日おめでとう!」
「ホントだ!エース、おめでとうっ!」
2人に言われて時計を見てみれば、ちょうど俺の誕生日……1月1日になったばかりだった。
クレアとルフィが相変わらずポカンとしている俺に向けて綺麗にラッピングされた箱を差し出してきた。
「気に入ってもらえるといいんだけど……これ、誕生日プレゼント。ルフィと私から。」
さっそくプレゼントを開けてみると、中に入っていたのは鮮やかなオレンジ色をしたテンガロンハットだった。
鍔の部分には紅玉で出来た飾りがついていて、フロントには違った顔をした2つのフェイスマーク。
街でこの帽子を見かけた時には無かったこの紅玉の飾りは、おそらくクレアの手造りだろう。(ルフィの不器用さじゃこんなに綺麗には作れねぇよ)
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