小さなほころびというのは見え始める頃にはもう手遅れで。すべてがらがらと崩れていくような音が聞こえた…気がした。

わたしの愛したすべてのものが、傷付き壊れてしまいそうで。彼女にもう近付きたくないと、わたしのすべてが彼女を拒絶した。



06 綻びひとつ





「さて。ユリ、食べ終わった?そろそろ行こうか」


チャンピオンの声にはっとなる。「あ、はい」と小さく頷いて、彼女を視界から消してしまおうと、足元で未だ彼女を威嚇しているイーブイに目を移した。


「えっ、トウヤもう行っちゃうの?」


ありえない、このあたしがいるのに、とでも言いたげな表情だった。平然とチャンピオンは頷く。え、これ、彼女からの好意気付いてるんだよね?完全無視?い、いや、わたしは全然気にしないんだけども!むしろいい気味とか思ってない。絶対思ってない。


「じゃあ俺たち行くから」


「え……あ、トウヤばいばい!また遊びに行くからねえ!!」


「来なくていいよ」


そんなばっさり。そしてわたしのことは完全に無視、と。いや気にしてないが。


「ユリ?」


「えっ、あ、すみません」」


「いやいいけど」


苦笑いしたチャンピオンまじいいひとである。キャラ崩壊とか今更である。


「…あの、彼女は…?」


「彼女?…ああ、夢崎のこと?」


「はい」


こくり、頷く。やっぱり気になるじゃないか。わたしを殺した、あいつ。きゅう、心配そうにイーブイが鳴いた。可愛すぎてわたしが死ぬ。


「知らない。急に最近付きまとわれるようになった」


「そ、そうなんですか…」


チャンピオンから出る負の感情に、それ以上聞くことは断念した。チャンピオンにこんな顔させる夢崎さすがです。