2929アンケ記念! | ナノ



※文に置いてます、沖田くんと志村さんシリーズと同じ世界観です。







とん、と胸元を押される。
それは妙からの停止の合図であるが、それには応じられないとばかりに沖田は掴む手に力を込めた。
角度を変え、再度深く口付ける。
逃げようとする舌を吸い寄せ無理やり絡めれば、また胸元をとんっと押された。
これにはさすがに反応せざるをえず、沖田はほんの少しだけ顔を離した。

「なに?」
「なに、じゃない」

ほんのりと頬を赤らめた妙は沖田の胸をグッと押す。
先ほどの強引な様子とはうらはらに、あっけなく沖田の体は離れた。

「話が違う」

沖田の部屋で向かい合う二人。
妙は顔にかかる髪を払いながら沖田を軽く見据えた。

「こんなことするって言ってなかったじゃない」
「俺なんて言いやしたっけ」
「最近悩んでることあるから聞いてほしいって言ってた」

ああ、と沖田が目を細める。

「志村さんが相談に乗ってくれるって言うからねィ。嬉しくて、つい」

沖田は片手でそっと、いまだに赤い妙の頬を擦った。
手を払い落されなかったことに内心ホッとする。
怒った妙も可愛いのだが、できれば仲良くしていたい。

「キスしちゃいけねえかィ」
「いけないことはないけど、順番が違うでしょう?」
「順番ねェ・・・初めから舌は入れてやせんぜ?」
「その順番じゃない。初めから舌なんて入れてきたら噛むわよ」
「そりゃあいい。志村さん相手ならM役も甘んじて受け入れやすぜ。でも俺も基本Sなんで、その後は俺にも噛ましてくだせえね。舌以外のところでもいいし」
「だからそうじゃないでしょ。沖田くんが悩みを聞いて欲しいって言うから話を聞きに来たの!」
「それなのに悩みは話さないでキスばかりして?」
「ちゃんと分かってるじゃない。本当に心配してるのよ。沖田くん最近ため息も多いし、何かあったのかって・・・」
「うん」
「私にできることがあるなら言ってほしいし・・・あの、ちょっと」
「なに」

沖田の指が頬から顎、そして首筋へと移ったところで、妙がくすぐったそうに身を縮こませた。
沖田に触れられると妙は心地良さと共にくすぐったさを感じる。
その感覚が少しだけ苦手だった。
どうしていいか分からなくなるからだ。

「そんなふうに触らないでよ。話せないじゃない」

妙が微かに眉をひそめると、沖田の手はぴたりと止まった。
しかし手は動くのを止めただけで、触れたまま離れようとはしない。
接触する箇所に熱が生まれる。
この燻るような熱も、妙は苦手だった。

「そんなに近くにいられると話しにくい」

妙の視線が不自然に逸らされる。耳が赤い。
そんな様子を見て、沖田がゆっくりと口元を緩めた。
なんて気分が良いのだろうか。
妙が自分を男として意識しているのだ。

「近くにいねえと話せねえですぜ」
「近すぎても話しにくいでしょ」

そう言って妙はさりげなく距離を取ろうとする。
今までもこうだっただろうかと妙は思い返す。
今までも、こんなふうに沖田を意識していたのだろうかと。
体が熱い。
内側から沸騰しているようだ。
沖田が感じているものと同じような感覚が妙に芽生えていた。
敏感に知覚してしまう。
肌に触れる感触とか近くで嗅ぐ匂いとか。
掴まれた力の強さや眼差しの行き先に至るまで。
そんな妙の変化は沖田にも伝わっていた。

「志村さんにできること、ありやすぜ」

近い距離で色素の薄い瞳が妙を捕えた。
怯えを含んだ視線が返される。

「さっきの続き、しやしょうか」
「それは、」
「俺の悩みに関係あんでさァ」
「・・・本当に?」
「本当」

首筋に添えたままだった手がつうっと皮膚をなぞっていく。

「志村さんは俺の悩みを解消しに来てくれた。なら、俺の言うこときいてくれやすよね?」

そう言って、沖田が目元を和らげる。
しかし、その瞳の奥の色は優しいものではない。

「志村さんからしてくだせえよ。さっきの続き。舌入れて、舐めたところから」

こういうときの沖田は強引だ。
言葉や態度自体は淡々としているのだが、拒否すればするだけ要求がエスカレートしてくる。
いつもは妙の意見を尊重する優しい彼氏であるが、沖田本来の性質はマイペースな我儘男なのだ。

「それ本当に悩んでるの?」

顎を引き、上目遣いで沖田の様子をうかがう。
距離をとったつもりだろうが、これでは男の熱を煽るだけ。
沖田はそのまま妙の首から下に手をすべらせて、制服の上から胸の膨らみに触れた。
驚いた妙が沖田の手を掴むが、その手は離れない。
いくら沖田が繊細な顔立ちをしているといっても、やはり彼は男なのだ。
力では敵わない。
その事実を妙は痛感した。

「志村さん・・・ちょっと大きくなった?」
「そうかな・・・制服着てるからじゃない」

沖田が何気なく聞いてくるものだから妙も普通に反応してしまった。
性欲などから縁遠そうな雰囲気の沖田が相手だからだろうか。
実際は全く違うのだが。

「脱がしていい?」
「だめ」
「大きくなったか確かめてえだけでさァ」
「自分で確かめるから結構です。それに・・・我儘言ってるとしてあげないよ。さっきの続き」

妙が目を細め、「してほしい?」と微笑む。

「もちろん」

同じように沖田も微笑んで、薄く開いた唇から舌を出し、柔らかな感触を受け止めた。



とりあえず、お互いベタベタになるほどキスをして絡ませ合って、一息ついたところで妙が「あっ」と声を上げた。

「沖田くん」
「なんですかィ。ヤリたくなりやしたか?」
「ならない。それよりも、結局悩みってなんだったの?」
「ああ・・・・」

沖田は視線を空間に漂わせる。

「まあ、悩みっていいやすか」

その視線を妙に移し、そのまま妙の額に自分の額をこつんと当てた。

「志村さんがいる限り悩みは続きやすけど、解消できるのも志村さんしかいねえ・・・かな」

どこか頼りない声でぽつりと呟く。
散々強引にやってきても、最後の最後で躊躇してしまう。
妙に嫌われるのが怖いからだ。
なんだかんだと言いながら、結局沖田は妙に弱い。

「じゃあ・・・ずっと一緒にいなきゃね」

そして妙も、沖田には弱いのだ。


好きで好きで好きすぎて

2011.04.28

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