2929アンケ記念! | ナノ



※強気な二人です。甘さは控えめに見えてラブラブな二人です。




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「───たまにはいいじゃねぇか」

妙の首に手を添える。
このまま締めて苦しめるためではない。逃がさないようにするためだ。

「なあ、妙。惚れた男の我儘ならきいてくれてもいいだろ」

首に手をかけたまま顔を近付ける。
口づけるわけじゃない。その目に自分を映しこむためだ。

「───くだらないわね」

黒い硝子に映った土方の姿が歪む。
女が笑ったのだと土方が理解したと同時に、鈍痛が腹をえぐった。

「あら。斬られる痛みには慣れてらしても、殴られる痛みには慣れていらっしゃらないようね」

妙がふっと笑った。
土方の腹にめり込む白い手が離れていく。
腹の痛みから誘発された吐き気に、土方の眉間に深い皺が寄った。

「チッ・・・抵抗するにも・・・やり方ってもんがあんだろうが」

内臓に響く痛みに耐えながらも、妙を掴む手は弛まない。
痛みを与えられたのには満足だが、拘束が解かれなかったことに妙は不満を募らせた。
どうしてくれようか。
腹じゃなければどこを抉ってやろうか。
密着した体を殴る場所は限られている。胸から上は身体に遮られ上がらない。足を踏んだところでどうともないだろう。
ならば脛を蹴るかと足を動かせば、先に土方の膝が妙の脚を割った。これでは上手く動かせない。苛立ちが舌打ちとして漏れる。

「最初から急所を潰しておけば良かったかしら」

男なら誰でもある、鍛えることのできない場所だ。なんとなく遠慮した自分が馬鹿馬鹿しい。土方が喉を鳴らす。

「いいのか?使いもんにならなくなるぞ」
「ええ。構いませんよ」
「・・・ああ、挿入なしのセックスがいいのか」

何を言ってるの、と妙が口にする前に塞がれた唇。首にあった手は妙の両手を壁に縫い付け、微塵の抵抗もできないようにされた。
舌の先から奥まで吸われ、どちらの体液か分からぬものを飲みこまされる。薄桃色の柔らかな肉を咀嚼するように愛撫し、執拗に重ね合わせ、その声も食べられてしまう。
咥内を丁寧に舐められるたび、腹の奥が疼くのが分かった。嫌な身体だ。その先にあるものを覚えこまされてしまった。それは土方も同じようで、妙の身体に触れる硬い感触がそれを物語っている。

「その気になったか」

顔を僅かに離した状態で、土方が囁く。

「・・・貴方はすっかりその気のようね」

乱れた息を整えながら、目の前の男を見やった。男の切れ長の目が細まる。欲が混じった瞳が妙を捕えた。

「なってもならなくてもいいさ。無理矢理やるわけじゃねえ」
「同意の上だと言いたいのかしら」
「愛し合ってる上で、だ。そうだろ?」
「愛も随分と下世話になったものね」

解放した妙の手首を慈しむように擦り、指に指を絡ませていく。その縋るような行為に、妙は思わず微笑んだ。気難しい男が妙だけに見せる無意識の姿。こんなふうにされては無下にはできない。
狡い男だ。
そんなこと、とっくに知っていたけれど。

「・・・私も、趣味が悪くなったものだわ」

心底呆れたように呟いて、絡まる指に口づけた。



「趣味が悪いのは承知の上だ」と言われて嫌えぬこやつが憎い
2012/2/4

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