妙誕カウントダウン!! | ナノ
26、神楽と妙



こんな日に限って傘が壊れた。傘がないと外も歩けないのに。

「ここにいた」

強くなる日差しから逃れるために入った知らない軒先。そこで小さく屈んでいると、柔らかな声が優しく降ってきた。

「アネゴ」
「神楽ちゃん、みーつけた」

同じように屈んだ妙がにこりと笑う。

「傘、持ってきたよ」
「なんで」
「ん?」
「なんでここが分かったアルか、傘が壊れたって」
「さあ、なんででしょう」

くすくすと笑って、妙はすっと立ち上がった。
一瞬、置いていかれると焦ったのは昔を思い出したから。

「慌ててたから、雨傘の方を持ってきちゃった」

パンっと開いた傘の花。大きめのそれは妙のもの。可愛くて、何度か持たせてもらったことがある。それを貸してくれるというのだろうか。
じっと見上げていたら、妙が振り向いて笑った。

「帰ろっか」

差し出された手が神楽を呼ぶ。神楽の顔にぱあっと花が咲いた。

「うん!帰る!アネゴも一緒ネ!」

ぎゅっと握った手。それだけで嬉しくなる。
二人で並んで歩く帰り道。妙の傘を差して、妙と手を繋ぐ。

「アネゴは私の味方ネ」

壊れた傘は妙が持っている。修理すればまた使えるのだと妙が教えてくれた。

「いつも助けてくれるアル」

妙がふふっと笑う。

「じゃあ神楽ちゃんの味方はたくさんね。銀さんも新ちゃんも定春くんも、みんな神楽ちゃんが好きだもの」

自分は優しい人達に囲まれている。神楽もみんなが大好きで、いつだってみんなの味方。
でも、妙の言葉の中に肝心な名前が入ってなくて、ほんの少し不安になった。

「・・・アネゴは?」

聞かなくても答えは分かっているのに、聞きたくてたまらない。
握る手に力をこめた。違う答えは聞きたくない。

「もちろん神楽ちゃんが大好きよ」

そっと握り返してくれる。がむしゃらに掴むことしかできない自分とは違う手。

「ずっと神楽ちゃんの味方」

繋いだ手を離すのは簡単だと神楽は知っていた。

「いつだって助けてあげる」

離れた手はまた繋ぐことができるのだと、ここで教えられた。

「私も!私もずっとアネゴの味方アル。アネゴを助けてあげる。約束ネ」

もう一度ぎゅっと握ったら、同じくらい強く握り返してくれた。
それがなんだか嬉しかった。



『あなたの味方』
2015/10/05
* *
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -