妙誕カウントダウン!! | ナノ
29、神威と妙



神威の話を一通り訊いた阿伏兎が、軽く思案して一言。

「もう食っちまったらどうですか」
「・・・食う?」

神威が目を瞬く。

「妙を食べるってこと?」
「ああ、言っときますけどマジで食えってことじゃねえですよ」
「じゃあなに」
「あー・・・」

阿伏兎は困ったように頭を掻いた。説明が難しい。今までそういう事にまるで興味がなかった男なのだ。そんな奴になんて説明すればいいのだろうか。





「たーえ」
「神威さん」

縫い物の手を止め顔を上げれば、既に神威が家へと上がり込んでいた。

「いついらっしゃたんですか」
「今だよ」
「今?」

全く気付かなかった。でもそれはいつものことなので今更なのかもしれない。神威はいつも神出鬼没だ。

「今日はどのようなご用事ですか」
「うーん、そーだねえ」
「神威さん?」

何かを考えているようだが、それを妙に言おうとしない。言えないことなのだろうか。

「妙はさあ」
「はい」
「俺を嫌う?」

神威の手が頬に触れた。元々触れ合うのが好きらしく、会えば気軽に触れてくる。そこに他意を感じないので、妙はいつもそのままにしていた。じゃれつかれてるような気分だ。

「嫌いませんよ。どうして?」
「何しても?」
「何してもって、何をなさるんですか」
「うーん・・・」

そこでまた神威が首を傾げる。神威自身もよく分かっていないようだが、妙に何かをしたいらしい。しかしそれは妙が神威を嫌う可能性があるかもしれないもののようだ。

「嫌われるのは無理なんだよね。妙と会えなくなるのも無理」

神威の両手が妙の頬を包み、そっと感触を楽しむ。

「でもね、拒絶されるのが一番嫌かも。だからそれはナシね」
「神威さん」
「妙も俺ともっと仲良くなりたいでしょ?だから、いいよね?」
「なにを、」
「いただきます」

え、と妙が口にする間に、その声は神威に食べられてしまった。


『食欲』
2015/10/02
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