妙誕カウントダウン!! | ナノ
9、桂と妙とエリザベス+銀時
※銀さんは出てきませんが、話題がほぼ銀さんなので(+銀時)表記をしてます。



庭掃除から戻ると、玄関の前に髪の長い男が居た。妙の周りで髪の長い男など珍しくなかったが、彼は特別だ。なにせ隣に白い生き物を連れているから。

「桂さんにエリザベスさん、こんにちは。うちに何か御用ですか」
『あ、新八君のお姉さん!お邪魔してます』

振り返った二人はやはり見知った顔。妙はプラカードを掲げるエリザベスと軽く会話を交わし、隣に立つ桂に顔を向けた。

「お久しぶりです、桂さん。お元気そうでなによりです」
「そちらも元気そうでなによりだ」

最後に会ったのはいつだろうか。普段から連絡を取り合うような関係ではないが、共通の知り合いが多いので関わり合うことは多々あった。

「それで、今日はどうされたんですか」

わざわざ家に来たのだから何か用事があるのだろう。そう含んで訊ねれば、桂の横からプラカードが伸びてきた。

『坂田銀時さんがどこに居るか知りません?』
「銀さん?」
「ああ。話があったのだが留守でな。今探しているところだ」

居そうな場所、行きそうな場所は既に探したらしい。家の近くにはいないと結論付け、志村家までやって来たようだ。

「ここは最後の望みだったが・・・ここにも居ないとなるとお手上げだな」

桂が深く息を吐いた。顔に疲れが見える。ずっと探していたのだろう。なんだかエリザベスも少し痩せてる気がする。

「良かったら中で休まれていきませんか?」

そう言って、妙はガラガラと玄関の戸を開けた。

「もしかしたらここ来るかもしれませんし、少し待ってみたらいかがですか」

無理にとは言いませんが、と続けると、桂が「じゃあ、」と頷く。

「お邪魔させてもらおうか。なあ、エリザベス」
『是非!!』

待ってました!とばかりに勢いよく掲げらたプラカード。妙は一瞬ぽかんとした後、桂と顔を見合わせて笑った。




「でも、どうしてここに銀さんが来てると思われたのかしら」

居間に通され、出されたお茶で喉を潤す。疲れた身体に温かさ染みた。

「そんな書き置きでもありましたか?」
「いや。だがいつも居るだろう?」

桂の向かいに腰をおろした妙がふふっと笑った。

「いつもは居ませんよ。というより、そんなに来ません」
「そうなのか」
「ええ」
『意外ですね。いつも居るって思ってました』
「なぜかそう思ってる方が多いんですよね。来ないこともないけど、そんなに頻繁ではないですよ」

それは意外だな、と桂が呟く。あの男が万事屋にいなければ居る場所など限られていて。ここはその中でも贔屓にしている場所だと思っていたからだ。

「神楽ちゃんを連れてきたり、新ちゃんに用があったりで。一人でふらっと来ることなんて滅多にないですから」
「そうなのか。ここに来た時は大抵居るからな。いつも居るものだと思ってた」
「そう思われてるって思ってました」

皆が思うほど銀時との距離は近くない、と妙は言う。決して仲が悪いわけではない。どちらかといえば親しい方だ。だがそれは、周りが思うような親しさではないのだと。

『でも、お二人はそういうイメージなんですよね』
「そう?桂さんもそんなイメージなんですか」
「そうだな」
「うーん・・・桂さんとエリザベスさんにそう言われると自信がなくなってきちゃいました」
『他人の方がよく見えてることってありますからね』
「違うと思うんですけどねえ」

首を傾げる妙にはその自覚がないらしい。多分、実情は妙の言う通りなのだろう。少なくとも妙はそう思っている。

「だが、銀時がここを訪れるのは事実だ」

ここで寛ぐ銀時を桂は何度も目にしていた。まるで自分の家のように、時には新八や神楽に囲まれてここで時間を過ごしていた。

「どちらにしろ、あの男がこの場所を好んでいるということに変わりない」

確かに銀時と妙は特別な関係ではないし距離も思ったより遠いのだろう。だが、そんなことはあまり関係ないのだと思う。

「あの根無し草だった男が根を張った。その場所の一つがここだった。それだけのことだ」

張った根のそれぞれに役割がある。走り続けた、今も走り続けている男が足を止める場所。それがきっとここなのだろうと、桂は静かな庭を目に映した。



『休憩場所』
2015/10/22
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