妙誕カウントダウン!! | ナノ
30、銀時と妙


「おまえ、帰ったんじゃねーの。なんでいんの?」
「さあ、知りませんよ。銀さんがご存知なんじゃないですか」
「いや、知らねえし。テメエのことだろーが」

銀時の呆れた声に、妙の溜め息が被さる。

「帰るつもりでしたよ。こんなとこ、一秒だって居たくない」
「そのわりには一秒どころか五分くらい居るけどな。案外気に入ってんじゃね?」
「馬鹿馬鹿しい」
「そりゃまあ、男と女がバカになる場所だからね。慌てたからってここに俺を連れてくるお前も相当なバカじゃね?」

ここ、どこか分かる?と銀時はイヤミったらしく顎で指し示す。きらびやかな装飾品と安っぽい内装品。その下品な色合いに妙が目を細めた。

「そういう場所でしょ。分かりますよ。初めてではありませんし」
「へえ。初耳」
「あなたと前に入ったでしょ」
「は、オレ?あーはいはい。新八のアレか」

思い当たった記憶を口にだせば妙が軽く頷いた。あの時の部屋はどんなのだったろうか。ベッドが回るやつだっけ?と訊ねれば、「回そうと思えばこのベッドも回りますよ」と適当に流された。

「普通のお店かと思ったらこんなだし」
「見た目も名前も普通の店じゃねーだろ。どこ見たら間違うんだよ」
「新ちゃん見てたんですよ」
「ブラコン」
「なんとでも」

そもそも二人がこんな場所に居るのには理由がある。

「つーか、弟がまた騙されてないか心配だからって、こんなとこまで後つけるか。しかもそれにまた俺を付き合わせやがって」
「連れがいないと入れないって言われた時にたまたま銀さんがそこにいたからでしょ。どうしてこんな所にいたのかはお訊きしませんけど」
「新八と同じ理由かもな」
「そうですか」
「つーか新八見つけるまでここ居るつもりかよ。ブラコンも大概にしろよ」
「デートの行き先がこんな所じゃなければね」
「見つけたらどーすんの」
「連れて帰ります」

しれっと言い放った妙に悪気は一切ない。その様子に銀時が溜息を吐くのも仕方がない。

「お前さあ」
「なんですか」

言葉を区切り見つめ合う二人。こんな場所で見つめ合っているのに色気などなく、互いの間に甘い雰囲気も生まれてこない。
思えばずっとこうだった。妙は弟と道場しか見えていない。見ていない。見る気もない。
銀時はその頑なな瞳にうんざりしながら、「好きすれば」と疲れた声を漏らした。



『腐れ縁』
2015/10/01
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