妙誕カウントダウン!! | ナノ
16、南戸と妙



「あら、南戸さん」

玄関に出てみれば、久方ぶりに見る姿がそこにあった。

「よお。相変わらず可愛いねえ」
「南戸さんも相変わらずのようですね」

全体的にだらしのない雰囲気は町のごろつきのようだ。
実際は簡単に手を上げるような男ではないので怖くはないのだが。

「若、来てるだろ」
「九ちゃん?」

挨拶もそこそこ、南戸が用件を切り出した。どうやら九兵衛を迎えにきたらしい。

「急に客が来てね。今は東城さんが相手してるよ」
「だから今日のお迎えは南戸さんなんですね」
「そうそう。東城さんが恨めしそうに俺を見てたな」

くくっと南戸が笑う。東城が九兵衛にべったりなのは周知の事実だ。

「それで若は?」
「九ちゃんならもう帰りましたよ」
「は、帰った?」
「すみません。早く言えば良かったですね」

軽い世間話をしている合間にでも言っておけば良かった。

「明日早いからって、一時間程前に」
「あー」

完全にすれ違いだ。それにここを出たのそんなに前なら、もう帰り着いているかもしれない。
一応確認だけ、と妙が柳生に連絡をいれれば、やはり九兵衛は既に帰宅していたようだ。

「帰る途中で東城さんと会ったそうですよ」
「はあ?あの人結局迎えに行ったのかよ」
「ふふ、やっぱり心配だったんじゃないですか」

どちらにしろ九兵衛とは会えなかったのだから、東城に迎えに来てもらえて助かったとも言える。客の相手を他の誰かがやって手が空いたのかもしれない。それも過ぎたことだ。考えても仕方がない。

「それならそれで良しとするか。俺の役目も終わったし、好きにやるかねえ」

どうせ帰っても客が来ているから面倒な用事を押し付けられるかもしれない。ならば、

「嬢ちゃんは暇してる?」

と、できるだけ軽く、警戒されないように誘ってみた。

「九ちゃんが早く帰ってしまったので時間はありますけど」
「じゃあ俺と一緒だ。若が帰っちまったから時間が余ってね」

別に相手は妙でなくても良かった。時間を潰すなら他にもいる。なのに今はそちらに食指は動かず、興味は目の前の少女に向かっていて。

「俺と縁側で花でも見ながらお喋りしない?」
「南戸さんはお花に興味があるんですか」
「綺麗なもんに興味のねえ男はいないだろ」
「それは初耳ですね」

綻んだ顔が可愛らしくて、ついつい撫で回してしまいそうになるのを我慢する。

「私も綺麗なものは好きですよ」
「ああ、綺麗なのも好きだけど、可愛いもんはもっと好きだねえ」
「南戸さんらしいですね」

そう言って笑った顔がやはり可愛くて、南戸は「参ったな」と唸った。

「若に怒られちまうかも」
「あ、あの、」
「なんでかねえ、手が勝手に動いちまった」 


『あの子は可愛い女の子』
2015/10/15
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