01/31 高妙(?)超短文
雪が降る時、どうして世界は無音になるのだろうか。
すっかり体温を奪われ温もりの消えた頬に、ハラリハラリと雫が流れた。
ほんの少しだけ上にある男の頬に、妙は手を伸ばす。
冷たい肌へと添えた手に、重なる男の手。
長い指は、それよりも華奢な手を包むように優しく優しく握りしめる。
「最後だな」
全てを壊すはずだったその手は、ただただ温もりだけを与えてくれた。
「もう最後だ」
眩しそうに目を細め、微かに唇の端を上げる。
それがこの男の泣き方なのだと気付き、妙は男の変わりに涙を零した。
ハラリハラリと雪が降る。
世界は無音になる。
もう彼の言葉しか聞こえなかった。