01/29 バトンで小話!
※全てカプ要素なしで、上から沖+妙、土+志村姉弟、銀+妙、オビ+妙、神威+妙、伊東+妙です。ではどーぞ!
勝手にお題やってみた!3
懲りずに第三段!
詩としてこの続きを考えるもよし小説のタイトルにしても構いません。基本何に使ってくださっても良いお、お題のつもりだから(^q^)←
それではどうぞ!
◆翔べ、どこまでも(沖田と妙)
男たちの怒鳴り声、走る音、何かが壊れ、空気が騒めく。沖田は使いの帰りにこの町に寄っただけだった。何の思い入れもないから、人も音も全てが景色のように通り過ぎていく。それだけの町。そこに突然現れたのは黒髪の女の子。
「あの、お願いがあるのっ」
乱れた息から焦りが伝わる。
「私がここにっ、隠れてること、誰にも言わないで」
そう言い残すと、彼女は慌てた様子で建物の隙間に潜り込んでいく。その不可思議な行動の理由はすぐに分かった。近付きつつある男達の怒声と足音。そいつらの目的はきっと彼女。
沖田は少し考えてから、少女の後を追うようにその隙間に身体を潜り込ませた。
「もうちょっと奥につめてくだせぃ」
「え、な、なに」
「早く。足音が近くなってやすぜ」
その意味を理解した少女は口をとざし、身体を小さく丸める。沖田がその隣に身体を落ち着けた瞬間、男たちの足音が地面を揺らした。怒声の中、何かを壊す音、そして時折聞こえる言葉。金貸し、父親、借金、返済、道場、権利書、娘。単語しか聞き取れなくても意味は分かる。つまりはそういうことなのだろう。
派手な音は続いたが、それも次第に消えていいった。
「……行ったみてえだな」
しかしすぐに出るのは早計だ。少女もそう思っているのか、動かない沖田を気にしている様子はない。
「親の借金かィ」
「え、あ……聞こえてた?」
「あいつらは借金取りか」
「ええ。土地の権利書を渡さなければ、代わりに私を売るんですって。だから逃げてるの」
「若いのに大変だねィ」
「うふふ。あなたも同い年くらいでしょ」
柔らかな笑い声に誘われ、沖田は改めて少女の顔を見た。整った顔に浮かぶあどけなさ。身の上にある苦労など感じさせず、朗らかに笑う同い年の少女。
「どうしてもって時は、俺がアンタを買ってやりやすぜ」
なぜこんなことを言ったのだろうか。初対面の相手に言う台詞ではない。なのに、沖田はこれが一番いいと思った。今の彼女にかける言葉なら、これが一番だと。
「まあ、その前にかなり稼がねえといかねえけど。それまでアンタも踏ん張りなせィ。俺との約束ですぜ」
今は何もできない。何の力もない。それでも諦めたくはない。たとえ見える先が暗いものだとしても、僅かな灯りさえあれば歩いていけるのだ。
土埃の舞う暗闇の中、押し黙っていた少女は「約束だね」と小さく笑った。
不確かな約束が、その先に小さな明かりを灯していた。
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今よりもちょっと若い頃をイメージ。14才くらい?過去捏造すみません。約束を果たす果たさないよりも、未来の約束をしたということが重要なのです。
◆川の字(土方と志村姉弟)
ありえない状況だ。土方の眉間のシワは深くなっていくばかりで、ふかふかの布団の感触など何の意味もなさなかった。いや、ふかふかの布団は良いものだが。
「土方さん。もう寝ちゃいました」
「うふふ。新ちゃん、まだ三分も経ってないわよ」
「あ、そっか」
布団越しに交わされる会話には花が咲いてそうだ。部屋の中は月明かりだけでよく見えないが、確実に笑顔でいるだろう姉弟の顔が目に浮かぶ。
「土方さん。寒くないですか?」
「あ、いや。大丈夫だ」
「姉上、明日の朝は雪らしいですよ」
「じゃあ布団をもう一枚」
「いや、これでいい。いつもはもっと薄い布団で寝ているから慣れてる。充分だ」
起きかけていた妙を言葉で制す。これ以上布団を重ねられると寝返りがうてない。
「でも良かったなー。僕と姉上だけじゃ分からなかったから」
「そうね。土方さんが居てくれて本当に良かったわね」
「ですよねー」
土方が志村家を訪ねたのはたまたまだった。近くを通りかかり、それならついでにと近藤から預かっていたものを渡しに来ただけ。それがなぜか志村姉弟に「あっ土方さん!」と感激されつつ中に通され、姉弟が出来なかったという数々の家の用事を頼まれたのだ。あまりの勢いに断ることもできず、土方は頼まれるままに用事をこなしていき、気付けば風呂に入り夕飯を食べ、そして軽く歓談をしたあとそのまま泊まることとなっていた。和室に敷かれた布団を見たとき唖然としたことを思い出す。なぜか布団が三組並んでいたからだ。
「姉上、土方さんに御礼をしないと」
「もちろん。美味しいマヨを買いに行きましょうね」
「明日はみんな仕事が休みでしたっけ」
「だからみんなで行けるわね」
時折小さな笑い声が交じる会話は耳障りではなく、どこか子守唄のようでもあった。よくわからないままここで寝ることになったが、布団の暖かさと柔らかな声が眠気を誘う。土方はそれに逆らわず、眠りの波間へと潜っていった。
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土方さんに懐いてる志村姉弟、というのを推してます。もちろん銀さんや近藤さんという存在はありますが、またそれとは違った形のね、なんかそういうの、よくない?
◆咲き誇る(銀時と妙)
「ほんと、馬鹿みたい」
女が笑った。笑ってくれて良かった。泣かれても嘘を吐くしかないから。
「はあ?俺のどこが馬鹿だよ」
「馬鹿なのは銀さんじゃなくて私です」
まあ、確かにあなたは馬鹿だけど。と、続けた女に視線を向ける。自惚れではないけれど、こっちを見ていると思った女とは視線が合わず、空を仰ぐ横顔がそこにあった。
「お前が馬鹿なのは知ってるよ。初対面から馬鹿だったじゃん」
自分を見てくれていると思ったのは何故だろうか。いつもそうだったから、きっと今もそうだと思っていた。
「私の世界は一度壊れました」
女は空を見る。
「銀さん。あなたが壊したんですよ」
銀時は女を見る。いつもとは逆だった。
「えーなに、今更恨み言ですかー」
「いえ。また新しい世界を作りましたから。前とは違う、もっと大きな世界」
女が空から銀時へと視線を移す。
「それなのに、また壊そうとするんですか」
今度は皆の前からいなくなるという形で。
「お前が作ったのは、そんな簡単に壊れるほど脆いもんじゃねえだろ」
銀時の世界も一度壊れた。壊れなかったのは胸の奥にある熱いもの。それを支えにして、立ち上がって、また作り上げた。目の前の女もその世界の中にいる。女の世界に銀時がいるように。
「でもあなたは、全部置いて行くんでしょう?」
護るために置いていくのだ。だから誰も銀時を止められない。
「分かってんならいちいち言うなって」
「分かってるのに言ってしまうから馬鹿みたいだって思ったんです」
銀時を見つめる目がゆっくりと細まる。
「みんなが知らないところで死なないで、なんて。馬鹿みたいなこと言ってしまうから」
ふっと、女が笑った。笑ってくれて良かったと思った。もしも最後になるのなら、泣いた顔よりずっといい。
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銀さんがそうしたいと言うならば、きっと誰も止められないかなと。置いて行くと言うならば、見送るしかない。銀さんにしてあげられることって多分本当に少ないのだと思います。
◆狂おしいほどの愛を(オビワン兄様と妙)
己の強さを追い求めることにしか興味がなかったとしても、幼い妙が自分に恋をしていることに尾美は気付いていた。それは多分、熱く焦がれるようものではなくて、兄を慕うような感情に近いけれど。それでもあの子は自分に恋をしていた。
まだ若かった自分よりも小さな少女の恋。それはまるでキラキラと光る星のように綺麗なもので。決して壊してはいけないと思った。だから気付かないふりをしたのだ。今まで通り可愛がって、優しくして。そしていい兄貴分のまま離れてしまえばきっと、この恋は淡いまま昇華して消えていくのだと。それがいいと思った。
「お妙ちゃんはまだ結婚しとらんかったか」
久々に再開した妙は年頃になっていた。幼い頃の面影はあるが、もう立派な娘だ。
「あら。オビワン兄様だっていい年してお一人じゃないですか」
ぷうっと頬を膨らませた顔があの頃と重なり、尾美が目を細める。
「はっはっは!別嬪になってもお妙ちゃんは変わらんのお。小っちゃい頃のまんまじゃ!」
「もうっ、また子供扱いして」
「わるいわるい。久しぶりに会えて嬉しかったんじゃ」
すっかり拗ねてしまった妙の頭を撫でる。丸くて小さな頭も、その位置が変わっている。すらりと伸びた身体。大人びた顔立ち。それでも花が綻んだような笑顔は変わらない。あの時のまま。
「でもお妙ちゃん結婚してたら寂しかったかもなあ」
「オビワン兄様は、私が結婚したら寂しいですか?」
「ああ。なんせわしはお妙ちゃんの兄貴分だからな。おらんようになったら寂しいもんじゃ」
「先にいなくなったのはオビワン兄様でしょ」
「ハッハッ!そうじゃったのお!」
あの頃のように笑い合っても、あの頃と同じではない。不意に合った目の中にあの頃の想いを探す。きらきらと光る星がまだそこにあったとしても、なかったとしても。尾美はまた気付かぬふりをするのだろう。妙の中にある綺麗なものを壊さぬために。
尾美は妙が好きだった。
それは熱く焦がれるようなものではなくて、妹を慈しむような感情だけれども。
それでも確かに、花が綻ぶように笑うあの子が好きだった。
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オビワン兄様は気付いてたと思うんですよ。気付いてて、気付かないふりしながら可愛がっていたんじゃないかと。あの頃の二人を想像するのが本当に好きです。
◆この世界に神なんていない(神威と妙)
別にその女がどうなろうがどうでも良かった。
酔っ払った男達に囲まれていたとしても、神威はどうでもよかったのだ。
たとえば女が目の前で殴られていたとしても心は動かなかっただろう。
だからこれは、ただの気まぐれでしかなかった。
「楽しそーだね」
振り返ったのは男も女も同時だった。
女一人に男は五人。多勢に無勢だが、なぜか女の方が落ち着いて見える。
それが神威の興味をひいた。
「じゃあオレはこっちの女の子の味方しよっと」
そう言った神威に我に返った男達が荒い声を上げる。
突然現れた優男に腹がたったのか、男の中の一人が神威の襟ぐりを掴んできた。
そこで初めて、神威が表情を少し変える。
「死にたいの?」
神威としてはごく普通に訊ねたつもりだった。が、何かを察したらしい男は神威から素早く距離をとる。どうやら勘は働くらしい。
少しだけ気持ちが浮上してきたのに、男達はくもの子を散らすように逃げていってしまった。
「あーあ」
せっかく楽しくなったのに。
「逃げちゃったね」
神威と同じように男達の背中を見送っていた女に声をかけた。
黒髪を一つに結い上げた、桃色の着物の女。神威は興味深げに見つめる。
「追い払ったつもりはないけど、あいつらどっか行っちゃった」
「はい。助かりました」
「ほんとに?俺がいなくても大丈夫だったでしょ」
「さあ。どうでしょうか」
強さを見極めるのは得意だ。あの男達と比べるなら、女の方が一枚も二枚も上手だった。それはこうやって淡々と会話を続けながらも神威に気を許さず、一定の距離を取り続けていることでも分かる。
「オレを警戒してるよね」
「警戒はしてますよ」
「あはは、やっぱり」
そりゃそうだ。いきなり現れた得体の知れない男を信用しろという方が無理な話。
「オレがあいつらみたいに絡んでくるって思ってるんだ」
「いえ。それはないです」
「へー。なんで?」
「あの人達はただの酔っぱらいだから。あなたは違うでしょう?」
女が神威に視線を向ける。綺麗な目だと思った。真っ直ぐ、濁りのない瞳が神威を捕える。
「オレは何が違うの?」
「あの人達は私を傷つける時に少しは躊躇するだろうし後悔もするでしょうね。あなたと違って」
「あー、それはあるかも」
神威の口角が柔らかく上がった。
「だってオレ、キミがどうなっても何とも思わないし」
「本当は助けたつもりなんてない、ですよね」
「うん、正解」
ただの気まぐれ、暇潰し。それでしかなかった行為を女は理解していた。だから余計に楽しくなる。
「そこまで分かってるならオレと遊んでよ」
女が保っていた距離を一気につめて、鼻先に顔を近付ける。見開いた目が神威を凝視する。
「あのままの方が良かったかもね」
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躊躇も後悔もしないけど、ちゃんと考えてるし色々と見えてるのだと思います。でも敢えて楽しい方にいっちゃう。それが兄貴。
◆氷の心臓(伊東と妙)
死にたくないと思えたら良かった。今よりもっと前に。今頃そう思ってしまっても、もう遅いけれど。
「珍しいですね。伊東さんが訪ねて来るなんて」
微笑みながら置かれた湯呑を傾ける。冷えた身体に温かな液体が染み渡っていく。
「仕事が一段落して、少し時間が空いたんですよ」
「あら。貴重な休憩時間がここで良かったのかしら」
「もちろん。ここは静かで落ち着きますよ」
「うふふ。ありがとうございます」
誰と過ごすだとか、そんなものどうでも良かった。一体に何になるというのか。人は裏切る。人は選ぶ。自分はいつも選ばれなかったから、次は選ぶ側になりたかった。そのための今までだった。
「伊東さん、夜は眠れていますか」
「夜?」
「ええ。ここに隈が」
妙は自分の目の下に触れる。伊東のそこに隈ができてると言いたいのだろう。その動きが少し子どもっぽくて、伊東がふっと目尻を下げた。
「確かに寝付きは良くないね。今は大きな仕事の前なので、知らずに気が張っているのかもしれない」
大きな仕事だ。今までやってきたことの総仕上げだと言ってもいい。ようやく手に入るのだ。追い求めていたものがもうすぐそこに。
「仕事の内容を詳しく聞くことはできませんから、私からは何も言えませんけど。それが終われば眠れるようになりますか」
「さあ・・・どうかな」
終わる、という言葉がどこか遠くに感じられた。あれは終わりではない。始まりなのだ。ようやく自分の望む生き方ができる。そのために動いてきた。それが自分の望みだった。
「きっと隊の皆さんも心配してますよ」
「ハハ、彼らが僕をかい?それはないな」
「あら、どうして?口では何と言っていたとしても、きっと気にしてらっしゃいますよ。あそこは、一番上がそういう方ですから」
微笑んだ妙が湯呑みを傾ける。伊東は遠い目で「そうだね」と呟く。
選ばれた男が憎かった。選ばれていることに気付いていない男が憎かった。自分はいつも選ばれなかったから、涙を凍らせて、悔しさを心に突き立てて生きてきた。砕けた時が死ぬ時だ。何も持たなかったから何も怖くなかった。なのに、今はどうだろうか。
「彼らは、何があってもきっと変わらないだろうね」
どんなことがあろうとも彼は変わらない。だから彼らは変わらない。
「そうですね。でも、変わるものもありますよ。あなたも、彼らも、きっと」
「・・・変わるものか」
それは一体何なのだろうか。それを自分は知ることができるのだろうか。知った時、自分は。
「いつか、見てみたいな」
伊東は小さく微笑んで、そっと湯呑に口をつけた。
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原作沿いの伊東さんは最期が決まっているので、それに向けた話が自然と多くなってしまいます。少しだけ後悔していたのかもしれないと思うのです。
ありがとうございました。
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