11/12 土方先生と妙
土方先生と妙
「俺の話を聞いてるのか」
「聞いてません」
さらりと言ってのけた生徒に土方の怒りが増していく。普段は優等生の彼女がらしくないから戸惑いも大きい。
「お前らしくないぞ志村」
「私らしいって何ですか」
「それは、勉強ができて、友達が多くて、真面目で」
「先生の言うことを素直に聞く、ですか?」
「・・・そうだな」
苦虫を噛み潰したような顔で頷いた。話し方に刺がある。志村はこんな生徒だっただろうか。
「私が先生を好きなのはそんなに迷惑ですか」
「迷惑とか、そういう問題じゃないだろ」
「じゃあ諦めます」
「は?」
「先生が迷惑に思ってるなら諦めますって言ったんです」
ぽかんと口を開けた土方に対し、妙はいつもと変わらぬ笑みを浮かべ「これでいいですか」と首を傾げる。
怒ったり戸惑ったり驚いたり。自分は様々な感情に支配されているのに、元凶の生徒は素知らぬ顔で笑っている。
告白してきたのはお前なのに。
「───あっそう」
「先生、教室で煙草はダメですよ」
「知るか」
土方は軽く咎める妙を見ずに煙草に火をつける。ふうっと紫煙を吐き出せば、妙が顔をしかめた。
「怒ってるんですか」
「いや、呆れてる」
「呆れてる?」
「ああ、自分に呆れてんだよ」
笑って吐いた息に煙が混じる。
「俺は志村に告白されて嬉しかったらしい」
「らしいって・・・他人事みたい」
「仕方ねえだろ、教師なんだから」
生徒とは一線を引くべきだ。そんなことはわかっている。だが、教師だ生徒だ言っといていざ離れて行かれると腹が立ってしまう。
もう認めなければならない。志村が自分にとって特別な生徒なのだと。
「卒業するまで彼氏とかつくんなよ」
タイムリミットのその日まで待っててくれと暗に告げれば、「先生以上に好きな人ができなかったらそうします」と微笑まれた。
「卒業まで目が離せねえってことか」
「青春真っ只中ですから」
→いやあ、土方先生いいね!書いてて楽しい。なんかすぐ胃とか痛くなってそうでいい。数学教師とか似合いそうだなと。
意外と先生からの束縛がキツそうです。フォークダンスでイライラしたりとか(笑)