11/12 ホストの金さんと妙ちゃん
ホスト金さんと妙
「やっぱ一回ヤってみねえ?」
よく晴れた日。公園の芝生の上に寝そべりながら言う台詞ではないが、そんなことは今さら問題ではない。
また始まった、と妙は呆れた溜め息を吐く。
「その話は飽きました」
「口説き文句に飽きたもクソもねえだろ」
「飽きました」
「だから一回ヤってみようって言ってんじゃん」
場所なら俺の部屋でもお前の部屋でもホテルでも外でもいいから、と無駄に選択肢を与えてくる。
「外って何ですか」
「え?外いっちゃう?初めてで外ってチャレンジしすぎじゃね」
「うるさいです」
どうせロクなことではないと思っていたが、やはりロクなことではなかった。爽やかな公園の空気が似合わないホストは「よっこらせ」と起き上がる。
「まあ、そんなにエッチしたいってわけじゃねえけどな。したいけど」
自動販売機で買ったミルクティーはもう温くなった。風は少し冷たい。
「もうちょっと仲良くなりてえなってさ、思っただけ」
「じゃあそう言えばいいじゃないんですか」
甘ったるいジュースに口をつけながら派手なホストが肩を竦める。
「そういうの、よく分かんねえから」
「そういうの?」
「あー、恋愛とか?」
「ホストなのに」
「な。それ」
→ホスト金さんは恋愛が分からない。妙ちゃんは恋愛を知らない。
この二人、多分なかなか進まない。
意外と純愛してたらいい。