10/28 志村姉弟バンザイ(冷静沈着弟と姉上)
※↑上のと同じ世界観
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どうすればいいのか。不意に考えることがある。どうすればいいのか。
「嫌だって言いましたよね」
ゆったりとした口調で、新八は妙の髪を解いた。結ったことがあるから、解き方も知っている。
「男は嫌だって言いましたよね」
ふぁさりと落ちた黒髪を、新八がくいっと引いた。
「新ちゃん怒らないで」
「怒ってません。悲しいんです。こんな、」
そう言って、掴んだ髪を口元に引き寄せる。
「僕が嫌いな匂いをつけて帰って来るなんて、ひどいです」
「偶然会っただけなのよ。どうしても断れなくて」
「姉上の嘘吐き」
「ごめんね新ちゃん」
困ったふうに笑う妙が憎らしかった。どうすれば、姉は分かってくれるのだろうか。どうすれば。
「とりあえず髪を洗って下さい。こんなのは嫌です」
「そうね、そうしましょう」
妙はゆったりと頷いた。いくら大きくなっていても新八は可愛い弟で、可愛い弟のワガママならきいてあげたくなる。
「今日は僕が洗います。姉上は何もしないで」
新八はそう言いながら、額を妙の額に擦り付けた。目線は下。幼い頃とは違う。
「新ちゃんが洗ってくれると綺麗になるから好きよ」
自分より小さな姉を包み込むように抱き締めた。どうすればこの瞬間が永遠になるのか、新八は不意に考えてしまう。今もずっと。
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