ようこそポケモンワールドへ



ガタン ゴトン

ガタン ゴトン



「お客様、終点でございます。」

ポンポンと肩を叩かれる感触と、耳に届く低めの声で、私は目を覚ました

「………え、終点?」
「はい。終点のカナワタウンでございます。」
「……え、…あ、すみません!すぐに下ります!」

辺りを見渡せば、そこは電車内のようで、どうやら私はそこでぐっすり眠りこけていたらしい。目の前の彼は終点についても一向に目を覚まさない私を起こしに来てくれたらしく、私は何とも申し訳ない気持ちになって、確認もそこそこに立ち上がり急いで電車を飛び降りた

「あ、お客様。お荷物をお忘れですよ。」

電車の扉を潜った所で、先ほどの彼にそう呼びとめられた私は、振り返ってお礼と共に愛用のバッグを受け取った

「わ!あ、ありが……っ!?」

その時、初めて目の前の男性の顔を見た私はピシリと固まった。えぇ、文字通り音が聞こえてきそうな勢いでピシリと固まりました

「…お客様?如何されましたか?」
「………い、いえ!何でもありません!えっと、荷物!ありがとうございました!」

そのままの勢いで私は電車を飛び出し兎に角、走り出した。後ろの方で先ほどの彼が何か言っていた気もするけど、そんなこと気にもしないで私は兎に角、走った。だって、だって何で何で!

「何でノボリさんがいるのおおぉぉぉ!?」

電車内で私を起こしてくれた男性、あれは見まうごとなき、ポケモンのバトルサブウェイ内にいるサブウェイマスターのノボリさんだった。はっ!?もしやこれ夢!?私は今までがむしゃらに動かしていた足を止めて、思いっきり頬を抓った

「いひゃいっ!」

あれ!?痛いよ!?どういうことだってばよこれは…。痛いということは夢じゃないってわけで、ということは目の前にいた人は本当にノボリさん?あ、でもコスプレっていう可能性も………

「…って此処は何処だ。」

私は自分の今いる場所を見回して首を捻った。幸い駅からはそんなに離れていない様で、駅の近くには格納されている電車がいくつも見えた。そう言えば、あの駅は何て場所だったっけ…。確か私が起きた時にノボリさん(仮)が言っていた気がする…

「えーっと確か…カワ…カン……カナ……。」


「はい。終点のカナワタウンでございます。」


「そうだ!カナワタウン!」

何てこった!まさにポケモン世界じゃないか!私はガックリと地面に項垂れて今一度、自分の行動を振り返ってみることにした。確か今日は仕事が長引いて、帰るのが遅くなっちゃったんだっけ。私は電車通勤だったから会社から1番近い駅に行って、電車に乗って、眠っちゃダメだって分かってたんだけど、あまりにも今日の仕事量が半端なかったから気付いたらうっかり眠ちゃってて、そして今に至ると……

「どうしよう。1番、大事な所で寝ちゃってるってどうなの私…。」

というか本当にどうしよう。そもそも此処は本当にポケモンの世界なのかな…。偶然っていうこともあるし…

「……とりあえず駅に戻ろう…。」

その時、鞄の中で何かがカタカタと揺れたのに私は全く気が付かなかった


ようこそポケモンワールドへ
(これが私の始まりでした)
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