ループミッション
「これで何回目かな…。」

暗闇に薄らと差し込む光に気付いて、私は瞼を開いた。見慣れた天井、必要最低限に纏められた自分の荷物。隣のベッドには同期の友人が、規則正しい寝息をたてては眠っていた

初めの自分への問いかけは、私がループを始める合図。今回が何回目のループなのかを確認するためのもの。そうだ、これで113回目のループだ。頭のおかしくなりそうな数字、数えたって仕方のない不毛なだけの行為だけど、私の頭は正常にその回数を刻んでいった

今日は、113回目の始まりの日

そう言えば、112回目はどうしたんだっけ…。私はベッドに腰を下ろしたまま、自分の最後を思い出した。巨人に頭を噛み砕かれた時だったかな…、いや。あれは23回目だ。だったら、ガス欠で地上に落ちてしまった際に巨人に踏みつぶされた時だったろうか…、だけどあれは59回目だったはず。……そうだ。私は、壁外戦で死んだんだ。ガスも刃も無くなってしまった絶望的な状況、木の上に追い詰められた私と友人は下に群がる巨人の大群に絶望していた。助けも期待出来ないその状況で、遂に巨人に食べられるのは嫌だと泣き喚いた友人は、何を思ったのか唯一持っていた小型の銃で私の頭を打ちぬいた。霞む意識の中、友人が微かに笑いながら自らの眉間へとその銃口を向けたのを最後に、私はループした

そうだ、これが112回目。私は隣のベッドですやすやと眠る友人を一瞥して、目を伏せた

「…今度は、絶対にあんなことさせないからね…。」

大丈夫。分かっていれば、避けられる未来もある。救える命もある。いつか、本当に全てを守り巨人を1人残らず駆逐する、そんな未来を手にすることが出来るなら。私は何度だって繰り返すだろう。もう1度、人類の自由を取り戻すために。大切な人たちを守るために

私は新しい朝を迎えるのだ


ループミッション
(これは、1人きりの作戦)
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