友人のぶっ飛んだ思考に悩まされる友人のお話
忍術学園 五年ろ組所属の鉢屋三郎は変装の達人だ。それ故に彼の本当の姿を見た者は、ただ1人としてこの学園には存在しない。彼は千の顔を持ち、その巧みな変装技術を駆使し、時にプロの忍までをも惑わすことがある。しかし彼の能力はその変装技術だけではない。その切れる頭や、鋭い観察眼、優れた身体能力。彼は忍びとして素晴らしい程のものを兼ね備えていたのだ。彼は将来、とても優秀な忍になるであろうと誰もが期待していた。しかしそれも、彼が彼女に出会う前までの話である


「……三郎、何してんの…?」


委員会活動が終わり、自室に戻れば同室である鉢屋三郎がこれまた素晴らしい笑顔で、謎の物体にチクチクと針を通しているではないか。聞かない方が良いとはこれまでの経験上分かっているんだけど、どうしても好奇心が勝って尋ねてしまう自分が憎らしい。そんな僕の心境も知らない三郎は、デレっとした笑顔のまま応えた


「あぁ、これか?これは、私の等身大抱き枕だ。」
「…因みに聞くけど、何のために?」
「ほら、明日は私が使いで学園を開けるだろ?そのために、寝床に就いた夢が寂しくならないように作ってるんだ。」


やっぱり聞かない方が良かった。明日、光の速さで引き裂かれる運命であろう抱き枕を、心底幸せそうに縫い合わせていく三郎に僕は人知らず涙を流した


「けどな、どうやら夢は恥ずかしがり屋さんみたいで、私が寝床に潜り込むと照れて暴れるんだよ。」
「……そうなんだ。」
「だからこの私の抱き枕で、寂しさを無くしてもらえばいいと思ってな!!ふふふふ」


毎回、血まみれ青痣だらけでくのたま長屋から戻ってくる三郎。予想はしていたけど、何てめげない前向き精神なんだろう…そういう精神は見習いたいとは思うんだけど…


「もっと私を近くに感じられる様、私の匂いをたくさんつけておこう。」


そろそろ僕は彼の身を案じて助言をするべきなんだろうか…いや、でもきっと彼のことだから全部、前向きな発言にとってしまうんだろうな…でも言わないのは友人としてどうなんだろうか…それよりも彼女との仲を取り持つ様に手助けするべきなんだろうか…あぁ…もうどうしたら良いんだろう……


友人のぶっ飛んだ思考に悩まされる友人のお話
(友人の手助けもしたいし、そんな変態に悩まされる彼女も助けてあげたいし…あーもう分からないよ………ぐーー)
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