05
貪るように口付けを交わす。
実際は三日にも満たないというのに、もう随分触れていないような気がして、あっという間に息が上がってしまった。
触れられるのも、触れるのも嬉しくて仕方がない。身体が歓喜に震えてしまっていて、怖いし恥ずかしい。
それでも、もういい。
変でもいやらしくても何でもいい。全部認めるから、だからどうか。
「きらわないで、ください……っ」
「当たり前だ馬鹿」
意地悪を言われても泣かされても何でもいい、たくさん可愛がってほしい。
切れ切れに訴えながら、愛しい人からの口付けをひたすらに受け入れていた。
「は、あ、あ、」
後ろから抱え込まれ、首筋を何度も吸われながら両胸を刺激される。衣服を乱されたと思ったらあっという間にはぎ取られてしまって、恥ずかしいと泣く暇もなかった。
何も隠すものがない両胸の先端は、触る前から赤く尖っていて、見られるだけで恥ずかしくて仕方が無かった。それなのに指で何度も転がしたり挟まれたりして、声を上げるのを止められない。
「や、もう、恥ずかし……い」
「好きだろう? これ」
胸ばかりいじめられて焦らされると、身体の奥がぞくぞくする。触られているのは胸だけなのに、違うところでも感じてしまうような身体にしたのは他ならぬ兵長だ。
だから私が何をされると喜んでしまうのかも、すっかりお見通しで。
「すき、すき……ぃ」
恥ずかしいことも気持ちいいことも好きで、何より兵長が一番好きだと。
首を反らせて感じ入りながら震える度に、兵長の熱が煽られているのを知る。二人とも何も身につけていない為、お互いが今どんな状態なのかがすぐにわかってしまって。
早く突き入れて動いてほしい。
はしたなくねだってしまいそうで怖かったのに、胸で達かされてしまう頃には思考が溶けていた。
「や、あ、ァ──!」
びくびくと身体を震わせて、胸への刺激だけで限界を迎えてしまったことが嫌でもわかってしまう。ひくひくと疼く下肢に擦れる兵長の昂ぶりがぬるりと滑るのは、私が濡らしてしまっているせいか、それとも。
「ん……っ」
「おい?」
もぞもぞと抱えられている腕から抜け出すと、不審そうな顔をしている兵長に構わず、そっと屈み込んだ。
「……っこら、待て」
目的はといえば一つで、もう昂ぶっている兵長の熱へと舌を伸ばした。もう少し、もう少しで触れることができる──そう思っていたのに。
「っ? や、したい、です……」
私が達かされるばかりではなくて、兵長を気持ちよくしたい。そう思っていたのに直前で押しとどめられて、思わずじわりと涙が滲んだ。
「しなくていいって言っても無駄か」
こくこくと何度も頷くと、諦めたように溜息を吐いた兵長は。
「じゃあ、お前もこっちに腰を寄越せ」
そんな、理解できない言葉を吐き出して、ごろりと仰向けに横たわった。
「……はい? え、よこせって、えっ」
「だから、俺のを咥えてぇなら、お前も俺に舐めさせろって言ってんだよ」
「わああああああああ!」
そんな赤裸々に言わないでください!
「今更だろ」
そうですけれども!
そのまましばらく、私がするだけでいいですいや駄目だと言い合っていたのだが、埒が明かなかった。最終的には兵長の、
「普段しないことしてやろうか」
たくさん可愛がってやる。
そんな言葉に逆らえる筈もなく、結局兵長に命じられた通りにするほかなかった。
「あ、あんまり見ないでください……っ」
「それは無理だな」
仰向けの兵長の上に乗せられて、いつもと違う体勢で、違う角度から見つめられるのがこんなに恥ずかしいとは思わなかった。
それなのに身体は反応してしまうばかりで、まだ触れられていないのにとろとろと蜜を零してしまうそこが恥ずかしくて仕方がない。
「……ん、」
それでも、目の前で熱を持つ昂ぶりを見ているとこくりと喉が鳴って、ゆっくりと舌を伸ばした。
いつもと勝手が違ってうまくできているかわからないけれど、夢中で舌を絡めて、口の中へと迎え入れた。兵長は深く咥えるようにされるのも好きだった筈──そんなことを考えていたら。
「ふぁっ? あ、やぁ……っあんっ」
それまで指で内腿の辺りをゆるゆるとなぞっているだけだった兵長が、突然刺激を与え始めたのだった。
ぬるぬるとゆっくり秘裂をなぞるようにして、とうとうそこに──舌が。
「あ、あ、あ、駄目、それだめです……っ」
尖らせた舌で一番敏感な芽をつつくようにされて、思わず力が抜けた。舌先でくりくりと円を描くように舐められると、悲鳴混じりの声を上げてしまう。
兵長のものをちゃんと愛して気持ちよくしたいのに、これでは私の方があっという間に限界を迎えてしまう。
「ほら、口も手も留守になってるぞ」
一瞬だけ攻めるのを止めてそれだけ言うと、また私を刺激するのに戻ってしまう。
「だって……だって、え……きもち、きもちよすぎて、」
熱を握った手を何とか上下させるのが精一杯で、それですらやっとだというのに。
舌が離れてくれた、そう思ったのは一瞬だけだった。
「こっちもちゃんとしてやらねぇとな」
「あ、やぁあ……っ」
秘裂を割るようにして舌を潜り込ませながら、指まで使って私を苛む兵長は、どこまでも楽しそうだった。
すっかり濡れてしまってもう準備などいらないことはばれてしまっているのに、それでも「慣らすため」と言いながら気持ちのいいことばかりをされる。
指を入れて弱いところを狙って刺激されながら、敏感な芯はまた舌でいじめられる。
ぐちゅぐちゅと耳を塞ぎたくなるような音が自分の下肢から聞こえて、いたたまれない。耳を塞ごうにも兵長の熱を刺激している為、両手は使えない。
刺激にほんの少しだけ慣れて、手や口の動きを再開しようとする度にわざと強くされる。
「……っぁあ、んぅ……っ」
いつの間にか指を増やされて、容赦など欠片もない。
きもちいい、もうだめと悲鳴混じりに恥ずかしい言葉が口から零れてしまう。それに気をよくしたのか、兵長の動きは更に激しさを増して。
中の気持ちのいいところをぐっと押されたのと同時に、すっかりかたくしてしまっていた芽を唇でそっと挟むように吸われて──限界だった。
「──────!」
声すらうまく出せないほどに感じて、そのまま達してしまう。
「ぁ、あ……」
まだ入れられてもいないのに、指と舌だけで翻弄されて、ぐったりと力が抜けた。
結局、兵長の昂ぶりは未だ熱を帯びて硬くたちあがったままだ。私ばかりが気持ちよくなってしまって、兵長を達かせることができなかったと落ち込んでいたら、私の下から這い出た兵長は。
「俺はこっちでな」
達したばかりの秘裂をそっと指でなぞりながら、そんな、恥ずかしくてたまらないことを言い放ったのだった。
それでも、こうして兵長と抱き合えるのが嬉しくて幸せでたまらない。
背中に感じるシーツは既にしっとりと水気を含んでいて、お互いがどうようもなく興奮してしまっていることを知る。
「……多分、あんまりもたねぇぞ」
ぴたりと秘裂に熱をあてがって、そんなことを言いながらゆっくりと兵長が入ってくる。
「ぁ、あ──」
ずぶずぶと硬いもので内部を侵食される感覚に、ぞくぞくする。私を安心させるように、最初はゆるやかに中を埋めてくれて。
いつもはそのまま、ゆっくりと慣れるのを待つのだけれど──今日は。
「やあ、だめ、だめです、あ──!」
兵長のものが入ってきただけで、もう駄目だった。
びくびくと震えながら、上り詰めてしまって──恥ずかしいのに、我慢ができなかった。
「……俺が先どころじゃなかったな」
「だって、兵長が……っ」
「やらしい身体しやがって」
先程指と舌で達したばかりなのに、入れただけでこれかと言葉でなぶられる。
恥ずかしいのに否定できないのが更に羞恥を煽る。実際、自分でもその通りだと思ってしまったから余計に。
「……これなら大丈夫そうだな」
動くぞ、と言われたのが先か。
「あ、あっ、──ッ」
奥までみっちりと埋められていた熱が一気に引き抜かれて、ぞくぞくと全身を快楽が襲う。
抜けてしまいそうになって、思わず縋りつくと、心配するなと囁かれ、再び奥まで、強く。
そのまま何度も行き来する熱に、否応なしに高まっていく。すっかり知られてしまっている気持ちの良いところを、わざと強く突かれると悲鳴にも似た声を上げて感じてしまった。
「やぁ、あんっ、兵長、兵長……っ」
気持ちいい、恥ずかしい、でも兵長が好き、頭の中はその三つでいっぱいになってしまって、他には何も考えられなかった。
「も、だめなの、これ以上、だめぇ……っ」
気持ちよすぎて、このままではまた達してしまう。
達きすぎてつらい、と涙が零れた。
「大丈夫だ、俺ももう──ッ」
今度は二人一緒だと言われて、両手を伸ばしてしがみついた。
「兵長、リ、あっ、────!」
一番気持ちがいいところをひときわ強く抉られて、限界を迎えた。きゅうきゅうとしめつけながら達して、同時に兵長も吐き出したのだと知ることができた。
身体の中で弾ける熱の感覚を味わいながら、幸福感に包まれたままゆっくりとシーツへ沈み込む。
下りてきた唇を受け止めて、そっと目を閉じた。