interlude
うるさくて鬱陶しくて変な女で、大馬鹿野郎だ。
なのにあいつのことが頭から離れない。
自分で自分の思考が理解できず、一晩距離を置いて頭を冷やせばどうにかなるかと思ったのに、逆効果だった。
こんなことなら昨日の晩、思う存分抱いてしまえば良かったと後悔していたら、廊下で張本人と出くわした。それなのに。
何故俺を見て逃げた。
「あの女はどこだ」
「私が知るわけないじゃない」
目の前のハンジはにやにやと腹立たしい笑みを浮かべている。何がそんなに楽しいんだこのクソメガネが。思わず繰り出した蹴りを避けられるのもまた腹立たしい。
「この間の部屋に行ったが、いなかった」
「おやおや。じゃあどこに隠れちゃったのやら」
三ヶ月前もこんな風にあいつを探していた。あの時はハンジに連れられて無事発見できたというのに、今日同じ場所に行ったものの人の気配はどこにもなく。
こうなったら本部内をしらみ潰しに探すか、目撃情報を集めるか。
見つけ次第俺の元へ連れて来いと部下全員に命じられれば早いのかもしれないが、流石に公私混同が過ぎる。……いや、実際の所あいつが俺以外に発見されるのが気にくわないというだけかもしれないが。
「ねえ、リヴァイ」
「何だ。俺はもう行くぞ」
「リヴァイはあの子のことをさ、好きなのかな?」
一応聞いておきたかったんだ、と笑う。相変わらず食えない人間だ。
「……お前に聞かせるわけねぇだろ」
あいつに言う前に、他の奴になんて言えるか。
「……びっくりした」
あなた、そんな顔もできるんだね。
「どういう意味だ」
そしてどういう顔だっていうんだ。
「他に無ぇなら行くぞ。時間が惜しい」
「ああ、じゃあいいこと教えてあげる」
「何?」
「前に行ったあの部屋、あそこで待ってたら会えるかもよ」
待ち伏せということか。確かに悪くない。
見つけたらけして逃がすものか。
全てを聞き出すまで、離すつもりはない。
そう決意して、足を踏み出した。
好きだと告げたら、号泣された。
今までどれだけ卑猥な言葉を無理やり吐かせても無体を強いても、最終的には笑顔で受け止めていた人間が、たったの一言で。
きつく抱きしめて泣くなと命じても、泣きやむまでにかかった時間はかなりのもので。
意外と泣き虫なのかとからかうと、そんなことはありませんと真っ赤な目をして言い張っていた。どこがだ。ばかめ。
その後も、抱き合いながら何度も繰り返し好きと囁かれる度、否応なしに熱を煽られた。
今まで誰かを抱きたいと思わなかった分、加減が効かない。このまま朝まででも続けられると思っていたのに、たったの一度でもう無理だなとと軟弱なことを言っていた。
好きだと告げられ、好きだと返す。
それで満ち足りた気分を覚えるなど、我ながら呆れるしかない。
執着するものができてしまって、俺は弱くなるだろうか。目の前で眠るこいつは、間違いなく俺の弱点になるのだろう。それでも──ああ。
「すきです……」
寝言でも好きだと繰り返している。俺の夢でも見ているのだろうか。
離したくなかった。
そうだ、守る為に更に強くなろうと誓う。
愛しくて仕方がない──ただ一人の、恋人のために。
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