苺ミルク、クッキー、要冷蔵コーナーの隅にひっそりと置かれていた三つ入りのマカロン。普段自分では購入しないであろう所謂女子が好みそうな商品の数々を抱えて、コンビニのレジへと向かう。案の定会計を担う店員からは訝し気な視線を向けられたが、そんなことは今の俺にとって些細な出来事だった。

 この瞬間に傍に行ってやれなくて、何が男だ。そんな風に思って即時に行動に移すのは、最早性分なのだと思う。

 それでもやっぱり、頻繁に来る行きつけの店で普段とはまるっきり違う商品をレジに持って行くのは、少々勇気を要したのだけれど。

(確か、名前はこういう食い物好きだったよな?)

 会計を済ませて受け取ったレジ袋を横目に、思い出すのは友人の言葉だ。何故甘い物を普段から鞄に忍ばせているのかと訊ねた時に、さらりと言ってのけた彼の言葉に妙に関心したのは、まだ記憶に新しい。

――八左ヱ門、落ち込んだ女の子は甘い物を食べたくなるんだよ。それに、俺もお菓子は好きだしさ。持ち歩いていて損はないだろ?

 性別の壁に阻まれず、男女共に友人が多い秘訣は此処に在ったのかと、カルチャーショックを受けたのである。それを後日名前に話してみたら、「流石、勘ちゃんは女心がわかってるねえ」と柔らかく微笑まれたものだから、彼の見解は的を射ているらしい。

 最も、菓子の持参を実行してみるのは今回が初めてだから、今の彼女にどの程度効果があるのかといった点では全く予測ができないのだが、少しでも彼女を苦しめている何かを和らげてくれたら役割としては上々だろう。

 彼女が好みそうな菓子を無事に入手できた俺は、店を出て外に停めておいた自転車の元へと歩いた。これから自転車に乗って、彼女に会いに行く。腕の中に閉じ込めて、何も心配する必要はないのだと、ただ一言伝えたかった。





砂糖漬けのラブレター
(甘党の彼ら曰く、菓子は女子を幸せにしてくれるらしい)




Title:確かに恋だった