満開に咲いた桜を眺めながら、通学路を歩く。高校生活最後の年。これから新しく始まる学校生活に期待を寄せて、クラス発表の紙が貼られている掲示板の前までやって来た。



「3年5組…」

今日から1年間過ごす自分のクラスを声に出す。3年5組の下に纏めて書かれている名前のほとんどが知らない人だった。数人だけ同じクラスになったことはあるけど、話したことはない。

緊張する。そもそも私は友達と呼べるような人が一人もいない。今年は絶対に話しかけて友達を作るぞ!!そう気合だけは満タンにして自身のクラスへと向かおうとした時、ある名前に気づき立ち止まる。

「えっ、」

驚き声をあげてしまったのはずっとずっと大好きで、遠くから眺めることしか出来なかった人の名前がそこにあったから。


「……黒尾鉄朗」


1年生の時からずっと好きで、話しかけれたことはない。向こうは私の存在すら知らないと思う。初めて同じクラスになれた高校生活ラストの年。彼に一度でもいいから声を掛けたい。

今この瞬間。3年になった私の目標が決まった。







数人のクラスメイト達が既に教室内にいた。そして、早いことに仲の良いグループが出来ていてお喋りをしている。あの中に入り話す勇気があればっ!いや、その前に挨拶だろう。息を大きく吸い声を出そうとした時、男の集団が前の扉から入って来たのに気づいた。

「…黒尾くんだ」

無意識に漏れた名前にハッとし、素早く手で口を塞ぐ。周りをキョロキョロ見渡し誰にも聞こえていないことを確認し、胸を撫で下ろした。
…大丈夫だった。ていうか、存在感の薄い私の発言が周りに聞こえているはずがない。そうだ、そう。自意識過剰すぎる、とまた彼のいる方へ視線を向けた。

「やっほー!黒尾、同じクラスじゃん!!念願の同クラ」
「いや、俺は念願とは思ってねーよ?」
「はぁ?真顔で言うなよ!!」
「はは、うそうそ」
「俺とは3年間、同クラだもんなぁ!」
「え?そうだっけ?…いでっ」
「ムカつく顔しやがってちくしょうっ」

独特の髪型をして扉が低いと錯覚してしまうかのような高身長の黒尾くんが入ってきた瞬間、空気全体が明るくなる。

む、無理。

無理無理無理無理!!無理です…!話しかけるなんて無理かもしれない。かもじゃなくて絶対に無理。さっき立てた今年度の目標は一瞬にして諦め、叶わないものになってしまった。話しかける、だなんてハードルが高すぎる。今日から毎日黒尾くんを眺め、見つめることを目標にしよう。

自身の意味不明なプライドのない目標にため息を吐いた。

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