「いった…ッ」
左之先生と付き合い始めてからもう日課となってしまった、体育教官室で向かい合っての昼ご飯。
昼食のパンを頬張ろうと口を開いた瞬間、唇に鋭い痛みが走った。
「どうした?…って、あー、唇切れてんじゃねぇか」
「こないだリップ切らしてから放ってたからヤバイかなーって思ってはいたんだけどね…。うわ、血出てきた…」
鏡を見ながら言っている内にじわじわと傷口から染み出る赤。
軽く舐めると口の中に鉄の味が広がった。
「今の時期乾燥してんだからちゃんと塗っとかねぇと…。とりあえず俺の貸しといてやるから、帰りにコンビニかどっかで買ってこい」
「はぁーい」
先生が席を立ったのを見てから鏡をしまい、開くと痛いので仕方なく小さく千切ったパンを口に運ぶ。
2口ほど食べた所で先生が戻ってきたので口の中のものを飲み込むと、パンを置いて顔を上げた。
「ほらよ」
「ん、ありが…」
お礼を言って受け取ろうとした瞬間、急に顔を近づけてきた左之先生に唇を奪われた。
「っ、先生っ!!」
「そう怒るなって、誰かに見られたわけじゃあるまいし。それによく言うだろ?
舐めときゃ治る、ってな」
そうからかい気味に笑う左之先生を睨みつけ(あぁもうかっこいいな)、私は唇に手をあてたまま口を開いた。
ねぇ、知ってる?
「唇って舐めると逆に乾燥しちゃうんだよ」
「…まじで?」
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