クロウは昔から人付き合いの上手い人間だった。表情が豊かであり、思ったことを素直に言うそれは、誰かを害させる事なんてまず無い。
クロウとはまったく逆である俺はそんなクロウに助けられてきた。そして、彼のその一面は友人である俺の誇りだった。
はず、だった。



「最近一緒に居るあれは何だ」

ジャックが言う、あれ。とはクロウと親しげに話す緋色の髪をした、最近この学校に転校してきた確かブレイブという名前であったはず。
ジャックはそれを分かってはいるのだが、いつも幼なじみである俺達を優先するクロウが何故つい先日転校してきた生徒に話しっきりなのが気に食わなかったらしい。眉間の皺がひどい。
だが、そうやって気に食わないでいるのはジャックだけじゃなかった。


「最近クロウがかまってくれないー」


鬼柳はそう言うと俺に抱きついてきた(すぐにジャックがそれを引き剥がしたが)何かとクロウにくっついていた鬼柳も、クロウが相手にしてくれないのが寂しいのだろう。
 クロウが誰かを好きになったり仲良くなることは実に良いことだと思う。というより、クロウの友好関係を俺がとやかく言う資格は元々無いから、どうも何も言えない、のだが。
それでも鬼柳やジャックの気持ちは痛いほどよく分かるのだ。


「遊星ー、帰ろうぜ」
「ああ」

放課後、クロウは鞄を肩に掛けると後ろの席に座る俺にそう呼びかけた。いつものことであるそれに、いつも通り簡単に答えると自分も鞄を手に取り立ち上がろうとした。その時だった。

「クロウー」


教室の外で自分では無い、だからといって鬼柳でもジャックでもない声がクロウの名前を呼んだ。


「ブレイブ!何だよ、どうした?」
「一緒に帰ろうと思って」
「そっか、遊星、ブレイブも一緒でも……」


クロウはそう俺に問いかけようとして途中でやめた。


「わりい、やっぱ帰れないわ」
「お、そうか。ならしょうがない。今日は1人寂しく帰るぜ」
「おう、さっさと帰れ」


クロウが言うとブレイブは「じゃあな」と手をひらひらと振って帰って行った。


「クロウ」
「ん?」
「その、すまなかった」
「はは、何で謝るんだよ」
「……ひどい、顔をしていただろう。俺は」
「ああ、してたぜ」


そうは言うもヘラヘラと笑っている彼に心が救われ軽くなる感覚がした。本当に、クロウにはかなわないな。


「謝るんなら、そうだなー帰りにマック寄ろうぜ。で、ポテト奢ってくれよ」


きっとクロウには俺が彼に、ブレイブにヤキモチを妬いていたことも、必要以上にクロウに抱きつく鬼柳に少しの嫉妬をしたことも、その他全て。彼には全部分かっているのだろう。
それでもクロウは俺と一緒に居て、今も、笑って手を握り、引いて歩き出す。
(その手の熱が、俺を包んでひどく安心させてくれることを彼はきっと知らない)




特別優遇
それは私達だから成し得る特別







あとがき
百鬼さまより[誰とでも打ち解けてしまうクロウにヤキモチする遊星]です。
……こんな感じでよろしいでしゅうか!?ものすごくどきどきしております(^P^)

無自覚総受けが空振りした感がありますので、番外編なるものを同時進行で書かせて頂きました!「正しい意思表明の仕方(ブレ+ジャ(鬼柳兄弟))」でもこれもまだ怪しいという←

今回は素晴らしいリクをありがとうござます!書いてて自分も楽しかったです(*^^*)
どうぞ今後とも我がサイトをよろしくお願いします!


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