俺達はこの無法地帯さながらのサテライトで、酒を飲み交わしていた。
最初に言い出したのは鬼柳で、鬼柳が言うには未成年が酒を飲んでしまったとしても罰する者などここには居ない。だから大丈夫だ。らしい。それにめずらしくノったのがジャックで、俺は半ば無理矢理参加させられていた。
きっとマーサが居たならば、そこはきちんと怒ってげんこつを頭に一回ずつしてくれるのだろう。その叱るという優しさが今のこの場所に無いことが少し寂しく感じる。そして、そんなことを考えて飲む酒は何とも素っ気なく、味の無い炭酸水を飲んでいるようだった。

「まだ飲んでんのかよ未成年共」

ゆういつ酒を飲まなかったクロウが、テーブルに広がる空き缶残骸と酔いつぶれた鬼柳を見て呆れ気味に言った。
クロウは世話をしている子供達の教育に悪いからと、断固として飲まなかった。
その理由が有っても無くても、飲まないというそれは懸命な判断だと、目の前の唸る鬼柳を見てはしみじみと実感した。

「お前は酒強いんだな」
「いや、鬼柳達が弱いだけだ」
「……違いねえ」

鬼柳は始まって10分程で崩れてしまい、飲んだのも3本と半分だ。ジャックは鬼柳がリタイアした後も飲み続けたが、しばらくして突如として立ち上がりどこかに行ってしまった。
どこに行ったのか考察してはみたのだが、自分もジャックと同じ末路を踏みそうになったのでやめた。

「おーい、生きてっかー?」

クロウは酔い崩れている鬼柳の耳を引っ張ると耳元でそう叫んだ。最初は反応が無かったが、しばらくして左手を上げてひらひらと手のひらを揺らした。

「クロウー気持ちわりい」
「飲めもしないのに飲むからだ馬鹿」

一度頭を叩くと、鬼柳の腕を首に回し力の入っていない鬼柳の体を引きずりながら持ち上げて部屋に運ぼうとする。あまりにも体格差があるため、手伝おうとすれば「お前はジャック」と促された。
もしかしたら、ややこしいのを任されたのかもしれない。
そう思いながら気を引き締めてジャックを探すと、ジャックは便所を前に倒れていた。
アルコールとまた違う何か(その何かを言ってしまえばジャックと同じようになりかねないのであえて言わない)の臭いがしてはっきり言ってしまえば気持ち悪い。
俺はジャックをベッドに放り投げると足早に部屋を出た。
「ご苦労さん」

部屋を出た途端そう声を掛けられた。クロウだ。

「お前もさっさと休めよ」
「ああ」

俺がそう言うとクロウは荒々しく俺の頭を撫でた。それが心地よくて、目を閉じてしまう。
しばらくしてクロウの手が離された。それが名残り惜しかった俺はクロウの身体を抱きしめた。

「……お前酔ってんな」
「酔ってない」
「嘘付け」
「……なら俺は酔っ払いでいい。酔っ払いでいいからもう少しこうさせてくれ」
「はいはい、たく、しゃあねえなあー」

俺を甘やかしてくれているクロウ。俺はそれに縋ってクロウの唇にキスをしたのだが、いつしか受けたマーサのげんこつより遥かに痛いボディーブローが俺をジャックのにのまえににしようと誘った。


酒に任せて
なんとやら

未成年の飲酒はダメ、絶対








あとがき
誰かに叱られたい甘えたい遊星のお話。クロウはお母さんみんなのお母さん!(笑)

クロウは酒に弱かったらいいなって思います。というか満足同盟は全員弱いといい。