(※遊星はクロウが好きだと自覚しています)



俺とブルーノがDホイールの調整を行っていた時のことだった。牛尾と御影さんがやってきた。何でもジャックに用事が合ったらしいのだが、その当の本人は居ない。近くでまたコーヒーでも飲んでいるんじゃないかと答えると、なら言ってみるかと牛尾が背中を向けて立ち去ろうとする中、御影さんがあたりを見渡してからこちらを見た。

「遊星、良かったらこれ受け取って」

御影さんがそう言って渡したのはつい最近近所に出来たケーキ屋の二個まで無料券なるものだった。

「何故これを俺に?」
「そんなに深い意味は無いのだけれど、そう!アトラス様が遊星は甘いもの好きだって言っていたから!私は仕事でいけないし、だから、ね?」
「まあ、甘いものは確かに好きだが……本当に貰ってもいいのか?」
「いいのよ。あとせっかく二個なんだから誰かと一緒に行って向こうで食べたらどう?例えば、クロウとか」

何故一番最初にクロウを例にあげたのか分からなかったが、クロウもそれなりに甘いものは好きだ。それに、これはいわゆるチャンスなのかもしれない。
確か明日は仕事が入っていないと行っていたか。と思っていると丁度クロウがブラックバードと共に帰ってきた。
御影さんはそれを見るなり牛尾と立ち去ってしまった。
クロウはそれを見て、「何かあったのか?」とヘルメットを外しながら問いかけてきた。

「ジャックに用事があったらしい」
「ジャックに?何でまたジャックなんかに」
「それは俺もよくわからない。それよりクロウ」
「ん?」
「明日は確か仕事が入ってなかったんだったな」
「ああ。明日は一日中暇だぜ」
「さっき御影さんにこうゆうものを貰ってな。良かったら一緒に行かないか?」
「え」

クロウは俺の言葉に驚くと、券をまじまじと見た。

「駄目だろうか」
「いや、行く!俺ケーキ好きだし!」
「そうか、それは良かった」

クロウが嬉しそうに言うのにこちらも嬉しくなり口元が緩む。明日がひどく楽しみだと、そう思うた。


朝、結構早い時間帯にケーキ屋へと向かった。
2人並んで歩いていて思ったが、こうやって2人で話すのは久々だ。最近お互いが忙しかったため、こうゆう機会が無かったからためなのだが、こうゆう時間はやはり作っていかないといけないと思った。それは何故かと問われれば、クロウのあらゆる一面が見れるのが楽しい。クロウが笑うのをもっと傍で見ていたいと思うようになったからだ。


「いらっしゃいませー」

若い女性がカウンターから頭を下げてそう言った。
俺とクロウは並べられているたくさんの種類ケーキの中から俺はシンプルにショートケーキをクロウはチーズケーキを頼んでその店の二回のベランダで食べることにした。
ケーキを先に口にしたのはクロウで、クロウはそれはそれは嬉しそうに幸せそうにケーキを食べた。あまりにも美味しそうに食べるものだから、俺もまず一口食べてみた。想像通り甘い。

「遊星のは美味しかったか?」
「ああ、クロウのはどうだ?」
「すんげえうまいぜ!食べてみるか?」
「え、いいのか?」
「ああ、ほら」

クロウはケーキを一口サイズフォークに刺し俺の前に差し出した。これはいかに、と困惑するが断るのも悪い。というか決して嫌なことではないのだ、逆にこれはチャンスにも似ている。
「食べないのか?」
「た、食べる!」

そう言って決心すると一口それを食べた。

「うまいか?」

一回頷くと、そうかと嬉しそうに笑った。今思えば一口食べるだけで力みすぎたかと思った。
「それにしても、たまには良いもんだよなーこうゆうのも」
「そう、だな」
「今度はジャック達も連れて来るか。アキとかこうゆうの好きだろうし」
「……俺は、嫌だな」
「へ?」
「俺は、次もクロウと2人だけが良い。いや、ずっと2人が良い……」
「あの、ゆう、せい?」
「これからも俺だけにチーズケーキを食べさせてくれないか」
俺が真面目にそう言うと、クロウは最初は驚いたものの、すぐに声を出して笑い始めた。
こっちからすれば一応、一生一大の告白だったのだが、それが笑い飛ばされたということは伝わっていないて言うことなのだろうか。昔の日本人は「味噌汁を作ってくれ」という告白が流行っていたらしいのだが。

「ははは、いいぜ?」
「え」
「また、一緒にここ来てケーキ食おう。次は遊星のケーキも食べさせてくれよな」

クロウは笑ってそう言ったが、伝わったか否かは分からない。だが、今はそれで良い。今はこの言葉だけでも幸せだから。



荒削りな告白
でもそれが一番2人らしいってね。









あとがき
ギャグ風味になった告白話。
機会があれば、シリアス風味のものを書きたいですね!