昨日まで威勢よく動いていた右腕は、今は包帯に包まれ痛々しく見える。
その腕の怪我のために試合へ出ることができなくなったクロウに俺ができることはないか。考えて考えて、結局何もできないことを知る。そんな自分が何より大嫌いだというのに。

「遊星」

苛立って乱れる精神を安定させるように、あやすようにクロウは俺の名前を呼んだ。

「あんまり怪我んとこ見ないでくれよ。なんか恥じい」

クロウは笑って言った。決して笑っていられるような状況じゃないのに。
一番辛くて悔しくて泣きたいのはクロウなのに、クロウは笑って、俺の強く握りすぎた拳に触れて、解こうとする。

「お前が思い込むことじゃねえだろ。俺の不注意だったんだからよ」
「だが!」
「俺、お前にこんなに思われて嬉しいよ。ありがとよ遊星」

また、笑う。
そして俺の頭を撫でた。だがそれはいつもの乱暴なものでは無く、子供を誉める時の母親のように優しかった。
耐えきれなくなった気持ちは溢れて、目の前に居るクロウを荒々しく抱きしめた。その時だけ腕のことを忘れて、それはそれは強く。クロウはそんな俺を拒絶することなく受け入れてくれた。

「クロウ」
「ん?」
「俺も強くなれるだろうか」


クロウが涙をあずけてくれるぐらいに、弱音を聞かせてくれるぐらいに、その身体と心が傷つかぬようにと守れるぐらいに、強く。強く。




弱くなれない君
そんな君を無性に抱きしめたくなるのです







あとがき
アニメ見ててもクロウって本当に強い子だなって思います。
少しは泣いてもいいと思うの。声を上げて大泣きしていいと思うの。そんでその後はみんなで大笑いして号泣したらいいよ。うん。クロウが幸せになってくれたら私は本望です(・ω・`)……あとがきじゃねえww