母は強し


(満足同盟/クロウは出てこないよ)


今になって気付いたわけでは無かったのだが、今実感すると胸が変に淀む感覚がする。
遊星とクロウは仲が良い。チーム内で仲が良好といことは良いことなのだが、チームと幼なじみということを引いてもと2人は特別仲が良いように思える。もちろんジャックも例外じゃない。だがクロウは、遊星にだけ見せる顔があるのだ。それが、俺の胸を掻き乱しては醜い嫉妬そのものを垂れ流す。
仲間に嫉妬なんて。自分でも何て馬鹿なことだろうと、情けないことだろうと呆れてしまう。このどうしようもない感情をすぐにでも消してしまうことができたならどんなに良いことか。でもそれが簡単に消えるようなものだったら今こんなに思いつめたりしないし、たぶんそんなの俺じゃない。俺は昔から独占欲が強いっていう自覚はあったから。
だがらってあからさまに暴力を振るったり、そんな子供みたいなこと、仲間じゃない限り絶対しない。仲間じゃない限り。


「鬼柳、居るか?」

1人でもんもんとそんなことを考えていると部屋の扉がノックされ、話題の本人の声が扉の奥で俺の名前を呼んだ。

「ああ、居るぜ?何か用か?」
「少し話がある」
「そうか。入れよ」

遊星はそう言われることを待っていたかのように(実際待っていたのだが)扉を開けて部屋に入るが、立ったままでいる遊星に俺が座っているベッドの自分の横を叩いて座るように促した。遊星は返事はしなかったものの促されるまま俺の隣に座った。

「で、話ってなんだよ」
「お前のことだ。鬼柳」
「え、俺?」
「最近よく俺を見ているようだからな。いや、睨んでいるのほうが合ってるか」
「分かって、たのかよ」
「ああ」

当然のように答える遊星に顔が引きつる。というか分かっていて今まで黙っていたなんて、人が悪くないか?

「どうせクロウのことだろう。お前は独占欲強いからな」

もう呆然とするしか無かった。今までこんなにも遊星を不思議だと思ったことは無い。もう人じゃなくて本当に蟹かその類のものじゃなかろうか。

「俺はクロウが好きだ」
「え」
「だが、それは決してお前がクロウに思うものとは全く別のものだ。友達以上になれと言われても俺達の友達以上は家族にしかならない。きっとこれからもそうなる。クロウもそれを十分理解している。だからこそ鬼柳には見せないで俺達には見せる物があり、その逆もある。それに俺が嫉妬をしないかと聞かれるとしないわけがない。大切な家族なのだから」

遊星が言ったそれは俺を気にかけたものというよりクロウを守るための、さながら母が子を思うときの母性を言葉に表したようだ。それを思うと俺の嫉妬はまだまだちっぽけだと思える。子を思う母の意志と執念より強いものを俺は知らないから。

「相手が鬼柳じゃなかったら一発殴るかデュエルでも挑んでいるところだ」
「え、あ、ありがとう」
「だが、クロウを傷つけるような事があったら許さない。それこそ鬼柳だから容赦なく殴らせてもらう」

俺を射抜くように見つめる蒼の双眼はまさに俺を射て殺してしまおうと訴えているようだった。決してクロウを傷つけるようなことはしていないし、これからもする気はない。というかさせない。
だが下手なことは出来ないなと、しみじみと思う。


END









過保護な遊星が書きたかっただけっていう(笑)
DVD見てて、遊星とクロウは本当に仲良いなーと思いました。可愛いですよね本当に!
遊星とクロウは恋愛でも親愛でも微笑ましくmgmgできます(笑)

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