言いまとめればたったの一つ


(狂(京)クロ/独白)


お前が呼んでくれた名前が未だ鼓膜を揺らして離れない。
何十人の人に呼ばれてきたこの名前だけど、記憶にこべりつくのはお前の声ばかりで、俺の脳はどうしようもないことになっているようだ。けどそれに後悔はしてない。素晴らしいことじゃないか。お前のことばかり考えられるなんて、幸せじゃないか。それを思うとこのどうしようもない脳も愛せる気がする。脳だけじゃない、俺、実は結構自分のことあんまり好きじゃなかった。でも、今では結構自分のこと好きになれた。お前を好きになれたからな。本当、お前を好きになれてよかったよ。
それを言ったらきっと「そんなことばっか言ってんな!」とか言って怒るんだろうな。それも愛情だと思うと、それさえも愛おしいの。それにお前も声を聞けるしな。それは傍にお前が居るみたいでうれしいけれど、お前が傍に居ないとやっぱり寂しい。お前の声は好きだけどやっぱりお前自身が好きだから。だから、俺の隣に居て欲しい。他の誰でもないお前に横に座っていて欲しい。そして声を聞かせて、名前を呼んで、笑って欲しい。太陽のような笑顔で、真っ黒になっちまった俺を照らして欲しい。あ、でも今照らされたら干乾びてゾンビみたいになっちゃうかもしれない。まぁ実際ゾンビみたいなもんだけど。そんなゾンビな俺だけど、お前はそれでも俺の名前を呼んでくれるだろうか、好きとか言ってくれるだろうか。
あぁ、でもその答えを聞く時間も無いな。最初に変に話しすぎたか。これはいけない。最後の最後まで駄目だなー俺。あ、じゃあ一言だけ。最後に一言だけ言いたいことがあるんだ。よく聞けよ!聞き逃すなよ!



深呼吸して、せーの!



「クロウ、大好き!愛してる!」
(――さようならなんて言ってやらねえよ)



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