安息地は蜘蛛の巣

(今更ですが我が家の黒たんはヘアバンド無し設定です)
(シリアスはログアウトしてます)


蝋燭のともし火だけが照らす決して明るいと言えない空間。俺はその空間で何かを考えることもなく足を進めていた。
騒いだりうるさいことがあるわけでもないこの空間には、俺の足音だけが響いていた。
無関心にそう頭で認識ていると、後ろから自分以外の足音が大きく音をたててやってくるのに気づいた。
何事かと振り向くと、その足音が予想以上に近くに来ていた。

「きょうすけ!」

俺の名前を呼ぶ声と、その声の主が一緒に俺に飛び込んできた。
胸の中でうごめく橙色の髪が蝋燭の火に照らされ綺麗にゆれているのを、まじまじと見てクロウだと気づく(まあこんなことをするのはクロウぐらいしか居ないからすぐ気づいたが)
「どうした」と頭を撫でてやるとクロウは顔をあげ灰色の大きい目で俺を見つめるのだがその目からは涙が流れていた。


「え、ちょ、クロウ?!」
「み、ミスティとカーリーが……」

ひどく動揺している俺にクロウは涙を拭いながら答えた。
すると、そのすぐ後ろから二つの影がゆっくりと寄ってきていた。その影は、さっきクロウから名前が出たミスティとカーリーだった。
クロウはそれに気がつくと俺の後ろに隠れた。

「おい!お前ら俺のクロウに何したんだよ!」
「あら、嫌がることをしたつもりは無いのだけれど」
「そーよ!私たちはただ髪の毛のお手入れしてあげただけなんだから」
「はぁ?髪の手入れ?」
「……俺の髪で遊ぶんだよ、三つ編にみしたりポニーテールにしたりしてさ」
「それ手入れじゃねえじゃねえか!ていうか何で俺呼ばなかったんだよ!」
「お前突っ込むところ違うだろ!?」
「だって貴方うるさいんだもの」
「本当そうよ。ほら、クロウそんな奴の傍に居たら危ないからこっちおいで」

カーリーが視点を低くして俺の後ろに隠れるクロウを手招きする。
クロウは未だ怖がっているようで、俺の衣服を強く握る。あーやばい可愛い。

「おい、貴様等何をしている」

まるで小動物みたいに怯えるクロウに思いを浸らせていると、さっきまでココに無かった声が俺の後ろから聞こえた。
そこに居た全員がその声ももとに視線をやると、大きな巨体が立っていた。ルドガーだ。

「鬼柳がクロウに危ないことしようとしてるから救出しようとしているの」
「ミスティの言うとおりよ。私たちに罪は無いわ」
「なんで俺だけ一人攻められるんだよ!おかしいだろ!」
「そんなことをする暇があるのならデッキの調整でもするのだな」

ルドガーがため息まじりにそういうと、クロウに目をやった。クロウの肩が少し震えた。

「クロウ、地縛神のカードを入れたデッキの調整は出来たのか」

ルドガーが無表情のまま問うと、クロウは無言でうなずいた。

「なら調度良い。デッキを見てやろう。来い」
「お、おお!」

クロウはあっさりと俺から離れてルドガーに駆け寄った。
ルドガーはそれを見て俺たちに背を向けて奥に消えていった。

「ふられたわね」
「な、ふざけんな!ルドガーとクロウが二人っきり!?クロウが何されるかわかんねえじゃねえか!」
「ほんと、あんたってどうしようもない馬鹿ね」

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