幼なじみの山本武と共に私は、ボンゴレファミリーに入ることを決めた。私は、戦うことはなくアジトでの事務処理のようなことをしている。気づけば互いに24歳となり、見た目も考えも大人になった。
彼は、雨の守護者として毎日のように外に出て仕事をしている。ボンゴレに入ってから話す機会が減り、向かいに住んでいた頃のことを懐かしく思う。幼なじみということもあって、毎日顔を合わせ一日の大半を一緒に過ごしていたのだから少し寂しさもある。
そんなことを考えながら、珍しく基地内で仕事をしている彼のことを見ていた。
すると、私の方を見て一度微笑んでそのまま隣にいた了平さんと歩いて行ってしまった。
「……なんか大人になったなー」
ため息をついた。
「何だお前、野球バカのこと見すぎだろ」
たまたま近くを通った獄寺が話しかけてきた。
「え、今そんなに見てたかな?」
「今も何も、アイツがいるときはずっと見てるっての」
そんなことも気づいてないのかというように呆れ顔。
「ずっと……?」
そんなに見てた自覚はなかった。小さい頃からずっと一緒でずっと見てきたから、どれくらい見ていたかなんて………… あれ?ずっと昔から私は、彼のことを目で追っていたんだ。
「気づかなかった……」
色々なことを自覚した瞬間顔が熱くなってきた。私はずっと武のことを……
「何をいまさら……アホかテメェは!」
そう言いながら、獄寺が頭をガシガシと撫でてきた。
「その顔やめて早く仕事しろ!!アホ女!!!」
「髪の毛乱れるからやめてよ!」
中学生に戻ったかのように獄寺と取っ組み合いをしていた。すると、右手が後ろから引っ張られびっくりして目の前にいる獄寺を見つめた。獄寺は、首を傾げまた呆れ顔。私の右腕を掴んでいるのは、彼ではないようだ。
「なぁ、ちょっといいか」
右手を引く声の正体は、山本であった。さっきまで違うところに行っていたはずがいつの間にか後ろに回っていた。
「な……に……?」
さっき自覚した自分の感情を思い出すと顔が火照ってしまう。目がうまく見れない。しかし、彼は、黙ってそのまま私の腕を引っ張って違う部屋へと移動した。
獄寺は、鼻息を鳴らし少し口角をあげながら去っていく2人の後姿を見ていた。
別の部屋に移動すると私を壁際に追いやって、目の前に立って上から視線を落とす。中学生のころとは違う目線の高さと自覚した感情が心臓の音をを速くする。
「急に引っ張って……こんなところで何?」
素直に話せず少し尖ってしまう。
「獄寺と楽しそうに話してたな? こんな顔赤くしてさ」
「そんなことない! 顔が赤いのだってっ……」
山本が頭の上の壁に右腕を置いて顔を近づけてくる。
「俺がこんなに顔を近づけても、いつもなんともない顔するくせにな」
いままではそうだったかもしれないけど、今の頬の赤い色は完全にあなたのせい。
「俺のこと、いつになったら男として見てくれんの?」
今は見てるよ……いや、ずっと昔からちゃんと一人の男の子として見てたのに私自身が気づいてなかっただけだ。
「…………っる……よ」
近づいてくる彼の顔に緊張してうまく言いたい言葉が出ない。
「なに?……聞こえないぜ?」
だんだん顔がにやけてるようにも見えなくはない。上手く話せなくて伝えたいことも言えないし、この上から見られる体制からも解放されたい。たくさんの抑えきれない感情が溢れ出した……
「……!!!」
目を見開く山本の唇には、暖かくて柔らかい感触があった。
自分の感情を爆発させてしまった私は、彼の唇に自分のそれを重ねていた。これしか感情伝える術はないと判断した結果であった。
勢いよく重ねた唇を離し、彼の顔を両手で挟み私は口を開いた。
「……男としてずっと意識してる! あなたが好きよ!!! 武!!!」
それを聞いた彼は、顔をぐしゃっとして笑い私の両腕を掴んだ。
「知ってるぜ、でも自分で気づくの遅すぎるな」
やっとかと言わんばかりに私の顔を見て笑う。彼はずっと私の視線に気づいていたようでいつ自覚するのかを待っていたのだ。
「獄寺に気づかされるなんてな!あと……仲良くしすぎで妬いた」
「えっ??」
今度は、山本が彼女の顔に手を添えて上から優しくキスを落とした。
「俺も好きだぜ、お前が気づくよりずーーーっと前からな」
ハハハッと意地悪な笑いをして私を抱きしめた。
いつからだろう。
あなたのことを目で追うようになったのは……。
いつからかわからないくらいずっと前からあなたが好きでした。
―END―