服装検査。


やばい。

週の中で一番けだるい水曜日の朝
今日は珍しく余裕を持って登校することが出来た、と一くんにドヤ顔をしてやろうなんて考えていたのに
校門で立っている風紀委員が服装が乱れている生徒を捕まえてはクリップボードになにやらかきこんでいるではないか
今日は抜き打ち検査だったのか、
いつもはこういう時、総司が教えてくれていたのに教えてくれなかったと言う事は総司も知らなかったのだろう。
これは、やばい。
今の私の服装は校則なんて最早無視な格好になっている。
指定のブラウスの上に薄手な黒パーカーを着てブレザーは着ていない
指定のリボンは鞄の中だ。
スカート丈も余裕で校則違反。


・・・少しでも怒られないようにリボンは着けてあの地獄の門を抜けよう。

ため息をついて校門に向かって歩くと
不思議なことに風紀委員の誰も止めてこない

今日はついているんだろうか?
このまま抜けてしまおうと自然に早歩きになる
このまま教室へ向かえばすべて無事解決ってやつだ。
そんな人生は簡単にいかないようでいきなり後ろから腕を引っ張られる
しまった、そう思いながらゆっくりと後ろを振り返ると不機嫌顔の一くんと不敵な笑みを浮かべる南雲がいた
『あ、おはよ一くん!』
「なまえ、言いたい事はもうわかっているな?」
はいはい、どうせ服装だよね
「お前、特に酷いから朝の門での挨拶ボランティア強制参加ね」
『は?嫌だよ朝起きれないもん』

この世で私が嫌いなものは早起きと校則とうざいひとだ

「なら、校則通りにしろなまえ。今すぐに。」
そんな無茶ぶり無理だよ一くん
ブレザーとか、捨てた気がする
もちろんそれを口に出せば二人に怒られるから何も言わなかったが

あ、もう一人の問題児も現れたらしい
整った顔を武器にこの危機をくぐり抜けようとしているらしいが
南雲が捕獲をしに行った。どんまい総司。

「ブレザーは無理としてもスカート丈位は今すぐどうにかなるだろう」
『切っちゃった』
潔く白状すると一くんの目がありえない、と避難していたがそこはあえて無視だ

「大体あんたは付き合ってる男がいながら、だなそのような丈で学校生活を送ろうなど・・・」
『付き合ってる男がいながら、だなって別に関係ないじゃん』
一くんがブツブツ言っている事を訳すならば
私と付き合っている一くん本人がほかの人に妬いてくれているのは嬉しい事なんだけど薄桜学園の制服ってスカート丈戻したらめちゃくちゃ可愛くないんだよね

「あんたには危機感というものはないのか?」
『は?危機感もなにもほかの女子もスカート丈みじかいでしょ?』
珍しく言い方に刺がある一くんにイラついてしまうとわたし達のとなりを歩く生徒がちらちらとこちらを見ながら通っていく

「そうは言っても、だな」
一くんが目線をそらしながら言葉をつまらすときは大概思い通りに言葉が出てこない場合だ
思わずため息がでてしまう
『朝からケンカ、やめよっか 』
「すまない」
少ししょんぼりとして一くんを見て私も言い過ぎたなと苦笑をこぼしてその流れで教室へ向かおうとすると腕を掴まれた
本当に今日はついていない

「・・・不安、なのだ」
『は』
思わず間抜けな声が出てしまったけどぽかんと一くんを見ると目もとを真っ赤に染めながら必死に言葉を考えている。可愛い。

「あんたは、綺麗故にそんなに足を出しているといつかほかの男に取られると思うと不安になるのだ」

大真面目な顔でこっちを見ているんだろうけれど真っ赤に染まったその顔をみるとこっちまで照れてしまう

「・・なまえ、顔が赤いが・・」
『馬鹿、照れる。』
「っ、すまない・・・」

お互い真っ赤な顔になって俯いているから周りから見れば阿呆なカップルに見えるのだろう

「もう、教室へ向かえ。」
『あ、うん』
少し照れたように顔を背けた一くんが少し寂しかったけど総司がにやにやしてこっちに来たから急いで教室に逃げた。
今日帰ったら少しスカート丈戻す努力しようかな、と考えていると一くんと目が合って少しだけ微笑んでくれた

明日スカート丈長くなってたら一くんどんな反応するかな

そう想像すると頬が緩むのがとまらなかった

服装検査。

(時には校則を守るのも、悪くないかもしれない。)